ピカソとその時代:ベルリン国立ベルクグリューン美術館展
成人の日でお休みの月曜日。朝から国立西洋美術館に行ってきました。
開催されていたのはベルクグリューン美術館 (Museum Berggruen) の所蔵品のうち、主にピカソをフィーチャーした展覧会です。
ベルリンを旅行した時に訪れていた美術館だったので、最初は行かなくても良いかとは思ったのですが、西洋美術館で開催中のもう一つの展示にも興味があり、思い直して今日に至りました。
ベルググリューン・コレクションは、現在ベルリン国立美術館に帰属していますが、元は画商であり収集家でもあったハインツ・ベルググリューン (Heinz Berggruen) の所蔵品が元になっています。彼が画商時代にパブロ・ピカソの版画等を取り扱っていたこともあり、所蔵品で最大規模を誇るのがピカソの作品です。今は巡回展で日本に来ていますが、ベルリンのシャルロッテンブルク宮殿近くにある兵舎跡にある二つの美術館のうちの一つで展示されていました(今、改装中なんですね)。ジャコメッティの彫刻が置かれたアトリウムを螺旋階段が囲んでいて、場所としても感じが良かったです。
確かにこのコレクションでピカソの占める割合は大きいのですが、私が個人的に響いたの、パウル・クレー (Paul Klee) でした。
クレーはスイス生まれのドイツ人画家・グラフィックアーティストで、ナチス・ドイツが台頭した時期に画家として、そして美術学校の教師としてドイツ国内で活躍しました。同時代の様々な様式を試し、独自に道を切り開いた芸術家なので、特徴を表すのは難しいのですが、今回の展示、どれも小作品ながらも点数が多いので、クレーの作風の変化が見えて非常に面白かったです。
クレーの絵の中で、私の好みは色彩豊かな作品です。1917年に描かれた『青の風景 (Landschaft in Blau)』はキュビズム的に複数の平面で構成される風景画になっていながら、色や模様に遊びがある感じですが、私が意外だったのはこの青です。幾何学的な図形で表現されるクレーの絵画、というと暖色系の色に緑が入るくらいかな、というイメージだったので。
一方同じカラフルな作品でも、『平面の建築 (Architektur der Eben)』など、バウハウスで教鞭を取っていた時代のものは、フォルムがより単純化されており、それだけに色彩が際立ちます。
シンプルという点では、タイトルも含めて気になったのが『知ること、沈黙すること、やり過ごすこと(Wissen, Schweigen, Vorübergehen)』という黒い細い線で描かれた女性の絵です。曲線と直線が組み合わさっただけの単純なデッサンで、それなのにどうして女性だと判別できるのかというと、片方に下がるカールした髪のような曲線、中心がくびれた上半身や曲線で表される乳房や丸いお尻らしきものがあるからなんです。右手は右のこめかみに、左手は右の閉じた口元に置かれていることから、このポーズはタイトルと関係があるのだろうと推測します。
普段、西洋美術館の企画展示室って2フロア使うのが多いんですけれど、今回は1フロアのみ。作品数はそれなりにあったので、それぞれ作品のサイズが小さめだったためだと思われますが、個人的にはこのくらいで丁度良かったかも。
普段の企画展は、見終わった後常設展見に行く気も起きないくらい疲れるので。