【甑島】俺たちはここにいる
月末になるとSNSのタイムラインに流れてくる参加球団のランキング情報。僕らは、静かに息をのむように「最下位」の文字を、遠く東シナ海に浮かぶ甑島(こしきじま)から眺めていた。
あの日、僕らは静かに泣いた。
幻と言われた球団
移住ドラフト会議がはじまってからというもの、ただやみくもに時間が過ぎ去っていったわけじゃない。僕らは、協力しあって、いつの日か出会う、素敵なあなたを迎え入れるために甑島のチームづくりをしていたのだ。
ハローワークもない、不動産屋もない島という小さな環境だからこそ、僕ら若者の受け入れるチカラと体制が必要になる。今思えば、そのための必要な沈黙だったのだと思う。僕らが、静かに涙を流した日、それが本当の旅のはじまりだった。
そんなさなか・・・
待望の晩(バン)会長の来日
本名は、純浦 晩成(スミウラ バンセイ)。
上甑島地域雇用・移定住対策協議会=通称Classdo!のボスだ。東京で移住力強化キャンプという重要な会合があるということで緊急来日されたのだ。
晩会長「ケンタ、案内ありがとう。褒美を遣わす。よきにはからえ」
そういうと、奥から綺麗なお姉さんがKIRIN BEER(読み方はわからない)と書かれている黄金色の液体を持ってきた。それは、ひとくち口にするとなんだか陽気になる不思議な飲み物だった。
晩会長「どうだ、けんたうまいだろ。これからいくトーキョーという大きなまちののみものだ。俺たちは、ふだん芋焼酎しかのめないが、これもいい経験だ。」
晩会長「あ、そうだ。それともうひとつ君に、プレゼントしたいものがあるんだ、ちょっとこっちへおいで。」
ケンタ「は、はいっ・・・会長!一体なんでしょうか・・・」
晩会長「これがプレゼントだよ。ソラシドエアだ。きみは知ってるかね?ここは、ただの航空会社じゃない。南九州移住ドラフト会議という、なんだかあやしい企画にも喜んで協賛してくれるという、ナウでヤングで、スマイリーな航空会社だ。」
ケンタ「は!!とても素晴らしい会社だと思います。そういう会社が未来を切り拓いていくと思います。」
晩会長「ふむ。しかもだね、きみ。笑顔の種を空からまくっていうんだ。笑顔を咲かすのではない。笑顔の種なんだよ。」
ケンタ「つまり、それは・・・」
晩会長「そうだ、種をまいたら、水をあげて、豊かな土づくりをしなければ、立派な花は咲かない。そんな想いをもった笑顔の種をまいて、地域に生きる我々と共にしあわせになっていくのだよ。」
ケンタ「か、かいちょう・・・いますぐ、この飛行機にのってトーキョーへ向かいます。ありがとうございます。」
晩会長の興奮が隠せない
晩会長「東京はー、すごかなー、だたなしこ、おしゃれやなー」
コシキ島の方言が、明治神宮のいちょう並木通りに響く。
副会長の広(コウ氏)も会場に到着!
晩会長、広さん、ケンタ。いよいよ3人のスカウトマンが出揃いました。あの、幻と言われた地域球団の甑島は、正直、インターネットに弱いんです。ブログとか、SNSとか、不得意なんですよ。時代遅れと言われてもいい。アナログ人間と言われてもいい。インターネットは、光ファイバーなどなく未だにADSLだ。でも、それがどうした。
俺たちはここにいる!!!
現実世界では絶対に負けない。そういわんばかりに、体を張って東京というまちで、片道9時間と大きなお金と時間をかけて甑島の全てを伝えてきた。もし、この組み体操で甑島の魅力が伝わっていないとしたら、それはまだ移住ドラフト会議が、僕らの熱い想いに追いついていないということだ。
※(よく意味はわからない)
第2位を獲得した 僕らのゆるキャラ
これが、全12球団のなかで得票数2位を獲得したゆるキャラですよ。すごく格好いいですよね。とーってもイケメンですよね。そうです、甑島のちびっこみーんな大好き《ナポーレオンくん》ですね。
[写真引用]http://www.pref.kagoshima.jp より
↑本物のナポレオン岩
ゆるキャラなどいらない!俺たちがここにいる!
移住希望者と、受け入れ側の地域でチームをつくって、それぞれのまちのゆるキャラをつくるという事務局からのとんだ茶番劇。
俺たちは、そういう安易な政策やグループワークに反旗を翻したい。甑島に暮らす、ひとりひとりが輝く島。ひとりひとりの個性が生きる島。多様性があって面白い島。ひとりひとりの意見が尊重される島。
俺たちがゆるキャラだ!
晩会長がそう言ったかは知りませんが、甑島のことをもっと知りたい。そんな風に思ってもらえていたとしたら幸いです。
文=ヤマシタケンタ
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