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サブカル大蔵経516下川裕治/中田浩資写真『不思議列車がアジアを走る』(双葉文庫)
中田浩資さんの写真が素晴らしすぎます。双葉文庫随一の贅沢・下川裕治シリーズ。
インドネシア、ウイグル自治区、台湾、タイ、韓国、サハリンの鈍行列車を乗る旅。
長旅でない分、他の著作に比べるとスケールやロマンは落ちるかもしれませんが、漂う情緒は、下川本随一だと感じました。
〈ドアにきをつけてね!〉その横に、ランニングシャツを着た猫のようなイラストがある。胸にはポケットもついている。そうなのだ。年月までは覚えていない。しかし三十年ほど前、僕はこのシールの脇に立っていたのだ。/二十代の頃に東京で働き、いま五、六十代になっている日本人は、ジャカルタの電車には心して乗り込んだほうがいいかもしれない。ときにセンチメンタルジャーニーの一線を越えてしまう。p.24・37
異国で、あの頃の自分に戻れる。タイムマシンとどこでもドアを兼ね備えるジャカルタの車両。リアル「モーレツ!オトナ帝国の逆襲」。確かに危ないよ、これは…。
そういうことか…。物売りたちは、冷房車であるコミューターに乗り込むことを禁止されているようだった。p.53
現地にのみ存在するカーストバリヤー。
吐魯蕃トルファン、天山30.8km。p.79
大村一朗『シルクロード路上の900日』と下川裕治『ディープすぎるシルクロード・中央アジアの旅』を思い出す描写。
狭いスペースだったが、腰が伸び、そこに血液が流れていく感じがわかった。目を閉じた。目頭が熱くなってしまった。ウイグルの人たちに救われた。彼らはずっと、僕らのことを気にかけてくれていたのだ。p.92
硬座車両での奇跡。年齢のペーソスを感じさせる引きと記述は下川さんの独壇場。
ミャンマー・インセン駅。いってみれば日本車の墓場のような場所だった。その眺めは、少し痛々しかった。p.155
日本のモノが、アジアに流れつく。私たちの時間や時代を背負って。
台湾の客家系の人々は本省人。当然民進党を支持する流れなのだが、彼らには福建省の人々に虐げられてきたという歴史の記憶がある。p.176
その国々での民族の怨念の交錯。今も「麒麟がくる」で、尾張と三河の溝を信長が話していました。ゾッとした。
タイはそういう国だ。微笑みが返ってくるだけなのだ。p.212
どこから来た微笑みなのか。
外壁を修復中のユジノサハリンスク駅。p.303
一昨年私が訪れた時は、修復は終わっていたようです。↓
地下道の入り口。ホームに向かうにはこの地下道しかない。p.309
↓本書で、触れていた地下道はこの辺りでした。
サハリンの鉄道は車掌も駅員もおばさんが多数派。p.315
会いたかった。
部屋食の国。積年の悩みが一気に解決した。p.342
下川イズム。ロシアの人たちはレストランに行かないで、スーパーで買って帰る。旅行者もそれと同じことをすればいいと。
コルサコフ、朝鮮人望郷の丘の碑。朝鮮半島に近い。晴れていても北海道すら見えない。p.334
日本人だった故に、日本にも、祖国にも置き去りにされた在サハリンの朝鮮人。
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