サブカル大蔵経938鈴木由美『中先代の乱』(中公新書)
私にとって、北条時行とは『学習まんが 日本の歴史 8巻』(小学館)の時行でした。隣りで雄叫びをあげる諏訪頼重とセット。
時行のりりしい顔と諏訪のノーテンキなオーが印象深い。(57頁)
大河ドラマの北条の行く末の高行。(41頁)
中学生の頃読んだこのシリーズのおかげで日本史の登場人物はほぼ顔でインプットされています。
そんな中、試し読みで出会った『逃げ上手の若君』(松井優征 ジャンプコミックス)
面白かった…!
諏訪幻想も高まる…。山口貴由できればというか…。
中公新書では、『応仁の乱』以降、鎌倉と戦国の間の時代が金脈となっている感じ。
丁寧な論文の見本のようでした。ひとつひとつ史料と先行論文を挙げて推論する手法。だからこそ空想もできる。あとがきによれば、著者も厨二病からスタートして本書に結実している。かっこいい…。
邦時は、『太平記』によると、伯父五大院宗繁に託されて生き延びたものの、宗繁に密告されて新田義貞に捕まり、幕府滅亡の一週間後に処刑されたという。p.41
ほんとに五代院っていたんだ…。
結果としてわずか二十日間程度鎌倉を占領したに過ぎない時行が、なぜ鎌倉幕府執権「先代」北条氏と室町幕府を開いた「当御代」足利氏と同列に置かれたのだろうか。p.116
今の言葉で言えばコスパがいいということか。北条と足利の間…すごい並び…。
この大風を後醍醐が行わせた祈禱の結果であるとしている。p.122
さすが異形の王権・後醍醐。
鎌倉の大御堂で誰が誰ともわからないように顔の皮を剥いで皆自害していた。p.127
この中に諏訪頼重もいたとされるが、なぜ顔の皮を剥いだのか。何か怪しい。
しかし、時行は死んではいなかった。推定年齢七歳の敗将は、落ち延びていたのである。p.128
日本史のミネバのような。
この戦いに時行は参加していなかったか、参加していたとしても逃れたようである。p.171
北畠顕家戦死の戦でも逃げおおせた。本当に異名は伊達じゃない。これは、何かを隠しているシンボルのような。
「備前新式部大夫入道」など、実名もわからない人物が目立つ。「塩田陸奥八郎」など、仮名を名乗り、官途を持っていなかった人物もいる。p.183
時行の周りは、大阪の陣の浪人たちのような。時行は早すぎた秀頼なのか…。大阪の陣の物語が時行の物語を生んだのか…。
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