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サブカル大蔵経259稲垣栄洋『雑草はなぜそこに生えているのか』(ちくまプリマー新書)
植物や昆虫の立場に立った擬人化。人間をやめたのかな?というくらいの表現。稲垣さんの真骨頂。
ドラえもん第一巻「草むしり機出してよ」「そんなものはない」p.9
自動に草むしりができることは未来でも不可能だった!藤子先生は、のび太に私たちの気持ちを代弁させた。なんとかして欲しい面倒な事象として草むしりを選ぶ藤子先生のセンスとこの場面を選んでくれた稲垣先生のセンスは共鳴している。
雑草が生えているのは道端や畑、公園など人間の作り出した場所である。このような場所は自然界にはない特殊な環境だ。実は雑草と呼ばれる植物は特殊な環境に適応して、特殊な進化を遂げた、特殊な植物なのである。雑草は教科書からはみ出した植物である。p.11
人間がつくり出した生き物、雑草。その構造は、フランケンシュタインや幽霊と同じか。
この雑草を完全になくす方法が1つだけあると言われている。意外なことにそれは、雑草を取らないことだと言うのだ。p.31
雑草の敵は大きな草木。手を出さないという処置。反応しない練習を雑草で。
遺伝子的に多様性のない得意な植物がある。それは、人間が育てる農作物である。p.57
人為的に工夫して弱りゆくいのち。
アイルランドでじゃがいもが疫病で取れなくなり、国を捨てアメリカに移り、アメリカの基礎が生まれた。p.59
野菜が世界を変えた。
自殖の有利さと言うのは、目の前の短期的な利益である。自殖を繰り返せば遺伝的な多様性が失われていくから、将来にわたって環境の変化を乗り越えていくことが難しくなる。そのため、短期的には自殖が有利でも長期的にはやはり他殖が有利なのである。p.105
多様性は強いんですね。弱らせるには単一性。会議体もそうなのかも。
オオバコはプランターゴ、ラテン語で足の裏で運ぶ。という意味。p.117
足の裏、仏足石。私たちの足の裏は常に何かを運んでいる。
〈踏まれたら立ち上がらない〉というのが本当の雑草魂なのである。踏まれても立ち上がると言うのはかなり無駄なことである。そんな余分なことにエネルギーを使うよりも、踏まれながらどうやって花を咲かせるかと言うことの方が大切である。p.180
本書の名言。立ち上がらなくていい。
すべての生物はナンバー1である。そして、ナンバー1になれる場所を持っている。この場所はオンリー1である。つまり、すべての生物はナンバー1であると同時にオンリー1なのである。このナンバー1になれるオンリー1の場所を生物学ではニッチと言う。ニッチとはもともとは装飾品を飾るために寺院等の壁面に設けたくぼみを意味している。p.185
生き物として自分のニッチを探そう。雑草とは何なのか。見えるいのち、見えないいのち。私と雑草、どちらが強い。
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