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サブカル大蔵経529『山田風太郎忍法帖短編全集9 忍法聖千姫』(ちくま文庫)
著名な歴史上の人物が登場する時代劇の中で、性にあらがう人を描き、哀しみまで活写。どうしてこんなプロットが浮かぶのだろう。山田風太郎は世界文学です。
坂崎出羽守。もともと彼は以前宇喜多家の家老職の家柄であったが、他の家老と争い、次に大々的に私闘を起こそうとしたので、喧嘩両成敗で双方とも宇喜多家を追われた。そのことを深く根に持って、後に関ヶ原で宇喜多秀家が西軍の総帥となるや、わざわざ徳川家に参陣し、この元主家に最も激烈な攻撃を加えてその恨みをはらしたという人間なのだ。p.13
宇喜多家については、木下昌輝『宇喜多の捨て嫁』を想いだします。
ー日の落ちた千姫屋敷の大屋根の上に、じっと一羽の白鷺みたいに佇んでいた女の頬に、涙がしずかにつたい落ちたのを、柳生堂馬は永遠に知らない。p.59
家康の孫、秀頼の妻、千姫。その歴史の犠牲者がまた犠牲者を産む連鎖。今日の「麒麟がくる」の帰蝶を見て思いました。
これほど主人を替えても、世間の評判では、細川はずるいとも骨なしとも申しません。それはわたしという天下から指弾された逆臣の娘を、妻として替えないという一つの事実があるからでございます。p.78
利用されるガラシャの名前。芦田愛菜は逆臣の娘か…。
ただ兵六を見たとたん、これは敵を油断させるに恰好の道具になるな、とちらっと考え、本来なら、いやそれはあまりに無惨だと反省して思い捨てるべき着想が、次に、ーこれぞ例の修行の好機!という観念のどよめきに吹き飛ばされてしまったのだ。p.306
山田風太郎の着眼点。欠落こそが強さを挫く唯一の力であり、悲劇に繋がる。
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