サブカル大蔵経840原武史『思索の源泉としての鉄道』(講談社現代新書)
宮脇俊三を受け継ぐのは原武史さんだと確信しました。宮脇俊三の『時刻表ひとり旅』と同じく講談社現代新書だし。(今、確認したら、復刊していて、しかも解説が原武史さんでした!)
講談社「本」に連載中の『鉄道ひとつ話』の続編ですが、あえてこの書名で出した意図。
実際に乗ってみてわかる思想。
その批評性と、わざわざ実際に乗る姿勢。
鉄道の哀しみと愉しみ。
東北新幹線以前の国鉄時代には東北本線と常磐線の間にまだそれなりの公平性が保たれていた。ところが東北新幹線は福島県内の中通りと浜通りの対称的な関係を圧倒的なものにしたのである。震災で大きな被害を受けたのは新幹線の開業によって劣位に置かれた地域ばかりである。p.14
新幹線による、東北の、福島の、日本の分断。東北本線と常磐線。しかし常磐線こそ日本を背負う歴史そのものであった。
富岡・双葉・浪江・女川・志津川・陸前高田・綾里・大槌・田老。震災のニュースで幾度と無く耳にしたこれらの地名は、常磐線や石巻線、気仙沼線、大船渡線、山田線、三陸鉄道の駅名でもある。東北新幹線に何度乗っても、太平洋沿岸にあるこれらの駅に出会う事は無い。p.16
新幹線からは見えない日本。私も学生時代に乗車した路線なので、同じことを感じました。
東急が開発した田園都市線の書店で、『東急電鉄のひみつ』が売れ続けるのは、この本が「愛線心」を出してくれるからに他ならない。p.84
関東の私鉄が、北海道の人間にとっては謎の存在ですが、だからこそこれから乗って知る愉しみがありそうです。
食後に高千穂で最大の書店と思われる明屋書店に立ち寄ってね。高千穂鉄道に関連する方は無いかと探してみたら代わりにコミック、写真集や、大人の本のコーナーが充実していて、さすが神話の里、性におおらかな風土を反映していると。p.120
この辺のフットワークの軽さは元新聞記者ゆえでしょうか。頼もしい原イズム。
30年ぶりの只見線。大白川ー只見間は20.8キロもある。この1区間だけで31分もかかる。14時28分、列車は只見についた。「つながれ、つながれ只見線」と書かれた横断幕が見える。p.132
只見線における数字が嬉しい。私も乗ったの30年前だと思いました。
わずか1分ながら間に合うダイヤになっていたわけだ。一旦ぬかれた特急に普通が追いついてしまうのを発見した驚き、わかってもらえたかな。p.186
宮脇俊三的時刻表の愉しみ。懐かしい。
「あまちゃん」の演出にはJR東日本に対する辛辣な批判が隠されていると言っても過言ではあるまい。安達ユイはJRの切符を持っていたのに、その機会を二度とも逃している。アキは夜行バスに乗っている。最終回、北鉄の駅には人波が。p.203
今の大河でも橋本愛を見ながらユイを重ねます。地元を捨てるJR、寄り添う三鉄。
ポーランドの鉄道売り子が各車両回り乗客全員飲み物とお菓子の無料サービスをしている。p.230
私もアウシュビッツに行くために乗った時、車両の形のお菓子を頂きました。
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