サブカル大蔵経123下川裕治/中田浩資『ディープすぎるシルクロード中央アジアの旅』(角川文庫)
現代の西域記。よくぞ、ここを旅してくれました!と下川本の中でもありがとう感の高い本。
特に僧侶はみな下川さんに感謝せねばならないのでは?唯識思想に関しても玄奘の気持ちを考えながら読んでくれる、こんな方いないですよ。
そして、羨ましい。インドナショナリズム、アフガンの壁、漢民族とウイグル、旧ソ連衛星国の風景…。さまざまな途中下車の風景をのせて、汽車はゆく。
私にとっては、下川さんは、アジアライター・貧乏旅行紀行のイメージが強かったのですが、最近の著作で、こんなに鉄道を乗ってくれてるんだー!と気付けて、私の神様・宮脇俊三の後継であり発展形は下川さんです。
玄奘はソグド人と別れ、1人で砂漠を歩むことになった。目印は砂を被った白骨や馬糞だったという。p.32
骨ロード、糞ロード。
バザールがあれば国家はいらない。いや、バザールが国家だった。p.41
クニの原初
ウイグル人公安の表情がぎこちない。彼はスマホを差し出した。そこには、「旅の目的は?」という日本語が表示されていた。p.76
すごい時代だなあ
バルイクチ。ロシア人はしっかりと酒飲み文化をキルギスのイスラム社会に持ち込み置き土産として残していった。ビールをラッパ飲みする青年。おまえ、本当にイスラム教徒か?p.123
ロシアとイスラムが交じったら。
シムケントは現代のスイアブだった。p.140
幻想が膨らむオアシス都市
中央アジアはどこも、朝鮮系の人々がかなり暮らしている。朝鮮半島が南北に分断される前、旧ソ連に渡った人たちの子孫や孫たちである。p.156
サハリンもそうでした。
パキスタンの街はスズキスタンドとダイウバスターミナルなのである。p.192
日本で唯一がんばるマルチスズキ
ラホールの街は人口1000万人超えの大都市。フラッグセレモニー。「ヒンドゥスタン!ヒンドゥスタン!」p.193
ヒンドゥーナショナリズム
玄奘は命を落としかけている。それほどまでしてインドを目指し、身に付ける価値が唯識にはあったのだろうか。p.233
命がけの唯識
中国人が汚いと言った部屋に、日本人が嬉々として泊まる時代か…p.329
今までの紀行にはない状況。リアル旅
楼蘭から敦煌までの道を、「展転」と記している。展転かー。転がること。巡り移ること。くるくる変わって一定しないこと。p.334
てんてん。動く道。流転する私たち。
「この方法で花土溝へ行く人、たまにいますよ。このルートなら2日で敦煌に出ることができるよ。」これが展転ということか。どこにも出ていない情報だった。p.336
検索できないところに真実あり