サブカル大蔵経84木村元彦『蹴る群れ』(集英社文庫)
サッカーで世界を変えることは難しいかもしれない。しかしサッカーを見ることで世界を知ることができる。p.11
昔ヨーロッパに行った時、新聞もテレビも観光地の屋台も、みんなサッカーだった。中欧、中東、アフリカ、南米。サッカーが盛んなところは西欧と因縁深い地域。日本だけがアメリカを向いている。今の日本人がヨーロッパを知るのはサッカーを通してだけかもしれない。ヨーロッパ人が日本と出会うのもサッカー選手だけかもしれない。テレビに映らないサッカーの風景。
ドーハでのバス同乗で氷解したこと多い。始祖マホメットだけを絶対視するスンニ派と後継者イマームを重視するシーア派。対立が根深いとされる両派だが、それぞれの選手のなんと仲の良いことか。ラザク・モサの従兄弟はフセイン率いるスンニ派政権に対する抵抗運動に加わり、捕らえられ拷問の末、惨殺されている。サダムの一家は…と、怒気をあらわにしていたFWが今、肩を抱いて話しているのが、スンニ派のGKジャミールなのだ。p.20
バスの中のスンニ派とシーア派。
気温の高い国では中盤など作っていられない。p.25
サウジは何でも持っている。そんなサウジに俺たちは勝つ!p.36
オリンピックの勝因はチグリス・ユーフラテス文明以来の、知恵と勇気だ。p.45
「中東」を知ることにおいて、サッカーへの信頼。政治や経済とは違う情報。
伊藤めぐみ監督『ファルージャ』。米軍使用の劣化ウラン弾の放射能に影響を受けて生まれた子供たちの映像。p.50
アジアへの非道も浮かび上がる。
イルハン。ドイツではトルコ人と呼ばれ、トルコでは僕らは、ドイツトルコ人と呼ばれる。トルコ本国のトルコ人からの僕らへのプレッシャーは、とてつもなく大きい。p.58
移民。アイドル、イルハンの苦悩。あなたはどこの代表か?どこがふるさとか?板挟み。どちらからも怒られる。これから日本人も考えることがあるかも。
ヨハン・アンドネ監督はまるで秘密を漏らすかのように小声で言った。ルーマニアのサッカーの特徴は、アウトサイドキックの美学だ。もちろんインサイドで蹴った方が確実だが、我々は確実性より奔放さを好むのだ。だからアウトでしか蹴ろうとしない。p.101
ルーマニアが一発で表現されました^_^この辺が元来のヨーロッパなのかな。
ボスニア内線に生まれたジェコ。僕は人間を何人だからと言って一般化する事はできません。p.181
人種のるつぼ、人種間の争い。そこで生まれた結論か。
塩竈FC小幡忠義。うちは子供がやめさせてくださいと言ってもやめさせねえ。おめえ、サッカー好きでねえの?やめんな。サッカー上手いからって人間すごいわけでもないんですよ。その子供の良いところを探してやらないと。だからうちはクラブです。チームじゃない。p.209
寺ですね。うちは駆け込み寺かな。p.215
もう、サッカーはスポーツではない気がしてきた。
日本協会の理事に女性は何人いますか?ノルウェーは8人中3人が女性です。地道に女子サッカーの種をまいて、今があるのです。p.249
『蹴る群れ』っていい題名ですよね。ヨーロッパもアジアも日本も女子も蹴る群れ。そこに育まれる智恵を共有したい。経済の奴隷になりませんように…。いや、奴隷であっても蹴ってほしい。誰のため?
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