サブカル大蔵経736石田千『役立たず、』(光文社新書)
『踏切みやげ』で初めて読んだ石田千の随筆。誰に似ているのだろうと思いながら読む。向田邦子?倉橋由美子?村上春樹?もっと読みたい。
一段めの引き出しには社会がおさまり、二段めは、ひとづきあいでふくらむ。そしてひとの世から抽出されたきわめて私的なしずくが、三段めに沈殿していた。p.20
昨年学習机の引き出しを整理しました。うる星やつらやさすがの猿飛のカンペンケースが出てきました。そこに私が沈殿していました。
忘れちゃった。そのひとことで圧倒的に有利になる。/気の毒なのは覚えてる人。p.27
記憶が私を苦しめる。
役に立たないものを探す方が、ずっと難しい。だんだんわかってくる。p.42
〈役に立つ幻想〉からの脱却。これ、出家の発想に近いのかも。
おとといから、あきびんに五百円玉を入れはじめていたのだった。そのたまった3枚を、ポケットに入れる。やっぱり、貯金はできないたちだった。p.65
五百円玉で中華屋へ。町中華礼讃予言。
きょうも、世のためひとのために、なんにもしなかった。p.99
世の為に何かをすることの危険
学級委員の選挙は、なりたがる子供ほど当選できないものだった。p.102
やわらかい多数決
悲しみのなかに、笑いがなじむ。墓は、その歳月を背負うための財産だった。p.126
悲しみと笑いが往復する場所、お墓。
白髪の先生は、読書の成果と言うのは、二十年後にある。卒業論文は、四十になって、顔から火を吹くために書くのだから、ひとのふんどしで相撲をとってはつまらないよと言われた。p.155
他人のふんどしがいまだに続いてます。
総理大臣は、むしろしっかりしていませんと言えばいいのにと思う。しっかりしていないから、力を貸して欲しいと言う方が早い。p.198
総理会見映ると、この文章を思い出す。
むしろ、役にたたないというのは、めったにないことやさかい、よくよく見ときなはれ。そんな神様のおはからいに思えてくる。p.225
役に立たないことの有り難さ。