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サブカル大蔵経120渡辺京二『北一輝』(ちくま学芸文庫)

昨年本の世界で出会えた書き手は渡辺京二さんでした。在野でこんな気骨のある方がいたんだと続々と発刊される著書を読みました。たまたま私の興味あるのある分野について書いてくれているのがありがたい。特に本書は、既存の北一輝評論を滅多斬りにしながら、あくまでも北本人の思想を、偏った前提や偏見なしで読み解く姿勢が爽快です。

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わびしい島ではない佐渡。二、二六事件公判判事「北の風貌全く想像に反す。柔和にして品よく白皙。流石に一方の大将たるの風格あり」p.15

「観世音首を回らせば即ち夜叉」p.15

北、憲兵に語る「承久の時の悲劇が非常に深く少年の頭に刻み込まれました」p.22

彼らが熱情を失ったのは目標が実現されたからである。p.55

『国体論及び純正社会主義』中略 精魂込めて取り込むに値するものそんなに多くはない。この著作はそういう数少ないもの1つだ。彼がこの国の近代政治思想史上最も重要な人物の1人であるのは、ただこの本の著者であるためである。p.105

松本健一、松本清張、よう、ご両人、と言いたくなるのは私だけではあるまい。めしいが2人掛け合いをやっているわけだ。p.116

彼の激情がほとばしるのはなんといっても、人間の可能性が階級社会によって阻まれていることに対してである。p.130

彼の理想とする国家は、農耕に従事する屯田兵的兵士コミューンと、薩摩に遺存するような土地共有制の上に成り立つ農民コミューンが結合された、生産性は低いが道義的な国家であった。この点、彼の思想は体質的に毛沢東に大変よく似ている。p.169

中国戦国期の縦横家の情念にほぼ等しくさえある。一個の頭脳をもってよく一国の権力と対峙しようというのが、その情念の実質であった。この男がやろうとした事は、反乱と言うよりも謀反と言う古風な言葉がふさわしい。p.230

226事件の当夜はスズに「おっかちゃんや、この騒ぎが片付いたら大きな家を建ててやるぞ」といい。p.344

「今の日本を救いうるものは、まだ腐敗していないこの軍人だけです」。p.350

「おれはゲーテなんだ。おれの学問には体系はない」p.368

佐渡に行きたくなってきました。

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永江雅邦
本を買って読みます。

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