サブカル大蔵経800柳沢きみお『おれ流』(朝日新聞出版)
昨日、父が往生しました。
自分も、その立場となったこと、無力なこと、沢山の方の暖かみを実感しています。
約一年半前、ちょうど父が入院してから、縁があって、このnoteに書きだしました。
今年6月から約3ヶ月、Kindle Unlimitedで柳沢きみおの作品を読む生活になり、先日読み終えました。
マラソンというか、沼というか、とにかく柳沢作品と伴走しながら歩んできました。
noteと柳沢きみお。
「自分の立ち位置」を知るということがいかに大切か、いま一度考えてみて欲しいと思います。p.16
〈漫画家を目指す人へ〉という一文。昔研究室で恩師に言われた事を思い出します。自分の研究が世界の中でどの位置にあるのかを知りなさい。だから先行研究はすべて網羅しなさいと。
私のモットーとしては、最初から「読者の喜んでくれることをやる」、それだけでした。p.20
集英社ジャンプ、秋田書店チャンピオン、講談社マガジン、小学館スピリッツ、双葉社アクション。どの媒体でも合わせる。
本当に、苦しい時のF君という感じで、何度彼に頼って、締め切りを逃げ切ったことでしょう。p.49
たしかに藤浪君には頼ってたなあ。その後『正平記』まで著すくらい。締め切りを護るためのドタバタ漫画が根底か。
物語とは人間の存在を語るためにのみあるもので、もし人間の存在が語られないとするなら、それは「物語のための物語」でしかないことになるのです。p.52
富野由悠季の顔が浮かんだ。対談希望。
『朱に赤』という、どうにもならないものを描いてしまったのです。p.108
印象深い作品です。押見修造『血の轍』の原作はこれなのではと思いながら読みました。これを描いた理由は、翔んだカップルの後、そのラブコメを真似されて絶望し、やけくそ自暴自棄になったと。そして青年誌へ。『瑠璃色ゼネレーション』。
量産の秘密はこうです。当時の作画は、すべてぶっつけ本番で描いていたのです。p.114
お経と同じように、行き当たりばったり戻ったりの繰り返しが多いのが柳沢作品の特徴。真骨頂が『夜に蠢く』でしょうか。
だから最後に八一の新しい恋人になりかけた崎田さんは、彼の理想の女性だったわけではなく、たまたまあの時期に連載終了が決まってしまっただけのことなのです。p.138
崎田さんに〈空〉を感じました。
この『DINO』では、劇画調の絵も勉強して描きました。p.146
『大市民』などでたまに登場する〈池上タッチ〉はギャグでなく勉強だったのか?
私は基本的には、マンガにはセリフはいらないと思っています。なぜなら読者はセリフを読まないものです。p.148
セリフありきと見透かされてしまうか。
私自身は二年ほど前から、少しだけ自分が思う画力が身に付き始めてきたと感じていて、さらに精進しているところです。p.221
今思ったのですが、柳沢きみおの唯一のライバルは小林よしのりでは?ジャンプ出身で不死鳥のような存在。炎上上等の発言と向上心。