営業とセールスはまったく違う。「ものを売る」とはどういうことかを体感した、住宅展示場でのできごと。
春ごろに、とある経営者さんたちにインタビューをさせてもらったときに聞いた話が、すごく印象的でした。
「営業とセールスって同じ意味合いで使われがちだけど、全然違うんですよ。」
ザックリいうと、営業とは、相手の話をよく聞いて課題を探し、その課題を解決するための提案をすること。
対してセールスとは、自社の売りたいものを薦め受注を勝ち取ること。
その話を聞いたときは「へえ〜、なるほど!」と衝撃を受けたものの、なんとなくまだ肌では理解していなかったというか。
ですが、この週末でまさにそれを実感するできごとがありました。
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この土曜日、夫と一緒に住宅展示場へ行きました。
2人とも正社員じゃないので家を買うなんて夢のまた夢……と思っていたのですが、最近フリーランス夫婦の先輩が家を建てたとか、フリーランス仲間のお姉さんがマンションを買ったという話を聞きまして。
ちゃんと計画していけば、私たちにとっても夢じゃないかもしれない。
今すぐどうこうするのは無理でも、5年後くらいまでにはなんとか……と、その情報収集のためにも、一度展示場を見に行って話を聞いてみようということになったのです。
見に行ったのは、A社とB社の2社。
最初にうかがったA社では、まず私たちがなにを求めているのか、今どんな暮らしをしていて、なぜ家が欲しいのか、どんな家が欲しいのかをじっくり聞いてくれました。
そのうえで、自社の強みの中から私たちにマッチしそうな点とその理由を話してくれ、A社のデメリットもきちんと話してくれて。
こんな感じで。
家を建てるときに必要な打ち合わせ内容や期間も細かく説明してくれて、「家づくり初心者」に優しい印象でした。
冷静に考えてみると、家なんて一生に一度買うか買わないかレベルの買い物で、「あ、私、家とか建て慣れてますんで」という人の方が少ないですよね。
根本の部分に寄り添いながら説明してくれて、とても印象がよかったです。
続いて、B社。
B社も丁寧に接してくれたのですが、A社とは対照的な感じでした。
軽いヒアリングの後、すぐにモデルルームの内見へ。約1.5時間ほど、B社の特長や強みをひたすら聞きながら家の中を見て周り、最後にはB社がおこなっている建築の構造について話を聞きました。
正直、説明を聞くばかりでちょっと疲れてしまった……というのもあるのですが、その中でも気になったのが、強みを主張するあまり他社を下げるような表現が多かったこと。
そしてA社との決定的な違いは、見学の最後、私たちの働き方や年収・貯蓄を聞いたとたんに、突き放すような態度を取られてしまったことでした。
もともと、B社にも「今すぐ建てることは考えていない。今日話を聞いて、計画を立てたい」という希望は最初から伝えていました。
ところが「いい土地があったら早く建てたいですよね?」といきなり希望の間取りを聞かれ、そこで私たちが正社員じゃないこと、今頭金として出せる貯蓄はないことが分かると、漫画の連載打ち切りかのようにあっという間に話が終わってしまい。
まあ、家を買うって簡単じゃないし、フリーランスはリスクもあるし、私たちが危ない橋を渡らないように厳しい現実を突きつけてくれたと思えば、ありがたいことなのかもしれません。
でも、なんだか「あなたたちに家の購入を検討する権利はありません」と言われたようで、私たちの働き方すら否定されたようで、すごく悲しくなってしまいました。
長時間自社の強みだけ聞かされて、「売りたいものを買ってくれる相手じゃない」と判断されたとたんにお客さんとして見てもらえなくなった、そんな気分です。
私たち夫婦が家を建てるのは難しいこと。
世間的に見て、それは紛れもない事実です。
ですが、その事実に対しての向き合い方・寄り添い方が、A社とB社ではまるで違いました。
A社が私たちにおこなったのは「営業」、B社は「セールス」だったのです。
もちろん、どちらがよくてどちらが悪いということではありません。
相手によって、状況によって「営業」をすべきか、「セールス」をすべきかは異なるのでしょう。
でも、今回私たちが求めていたのは「セールス」ではなく「営業」であって、それを汲み取って実践してくれたのがA社でした。
私たちが社会信用的に弱い立場にあることも理解したうえで、「それでも家を建てる(=夢を叶える)方法」を一緒に探してくれるような対応をしてくれたA社。
「正社員の方が色々と有利で安心なのは事実です」と前置きをしたうえで、「でもフリーランスで家を買う人も少しずつ増えていますよ。一度もっと大きい展示場、一緒に見に行ってみませんか?」と寄り添ってくれて。
建てられるか建てられないかは、正直まだ全然分かりません。
でも、自分の売りたい気持ちよりも、まだ買えるかすら分からない私たちの気持ちを優先してくれた、A社の担当さん。
将来本当に家を買うことになったら、絶対にA社にしたいと心から感じました。
ただ家を検討するだけでなく、なんだか人生において大事なことも勉強させてもらえたような週末。
そして私たちにしっかり寄り添ってくれるA社で、年明けに大きな展示場へ遊びに行くことになりました。
これも決して「今すぐ買うため」ではなく「本当に買いたいか、買うためにはどうしたらいいのか」を確認するため。
「やっぱり私たちに無理なのかな」と落ち込んでいましたが、A社の担当さんのおかげで、前向きに年を越せそうです。