2022年第3クォーターハイライト
あっという間に肌寒い時期になってしまいましたが、未だに夏の思い出を引きずりまくっています。2年半も我慢に我慢を重ねた中でようやく観に行けたサマソニは、本当に生涯忘れることのない2日間になりました。
そんな今年の夏も「豊作」でしたね。特にサマソニやフジロックに出演したアーティストや、これから単独ツアーで来日するアーティストが続々と傑作をリリースして、常に耳は幸せに溢れました。10月もほぼ終わりかけのタイミングとなってしまいましたが、今回は7〜9月、いわゆる第三四半期にリリースされた新譜の中から個人的ベスト20を、簡単な感想とともに紹介します。
20. Pale Waves 『Unwanted』
英・マンチェスター出身の4人組インディーロックバンド、Pale Wavesの3rdアルバム。一瞬Avrilがよぎる2000年代リバイバル的なサウンドに接近した2ndから、さらにポップパンク色強めになったパワーポップサウンドで爽快感抜群。Heatherはじめロックスター感増し増しのメンバーのビジュアルも良き。11月の来日公演がより楽しみ。
19. The Devil Wears Prada 『Color Decay』
米オハイオ州・デイトン出身のメタルコアバンド、The Devil Wears Pradaの8thアルバム。個人的には2014年の来日公演に行くくらい大好きなメタルコアバンドの一つ。持ち前の壮大なスケールのヘヴィサウンドはそのままに、近年のBring Me The Horizonにも通ずるようなオルタナ的アプローチも含まれる快作。久々にメタルコアのライブ観たいと思わせてくれた一作。
18. Sports Team 『GULP!』
英・ロンドンを拠点に活動するロックバンド、Sports Teamの2ndアルバム。エネルギーに満ちたデビュー作から2年、ジャケット通りの火力満点の爆弾のような作品を投下してくれましたね。彼らのような割とストレートめなロックンロールをかき鳴らすバンドは結構希少だったりするので、今後のさらなる飛躍に期待しちゃいます。
17. Mura Masa 『demon time』
英国領ガーンジー島出身のプロデューサー/DJ、Mura Masaの3rdアルバム。A$AP ROCKYやslowthaiのビッグネームから、PinkPantheressをはじめとする今注目の若手まで豪華な客演を迎えた今作は、アルバム通しで聴きながらひたすら踊りたくなるような一枚だ。タイトルの「demom time」は「パーティを楽しむ時間、何かに没頭する時間」という意味のスラング。
16. YUNGBLUD 『YUNGBLUD』
英・ドンカスター出身のシンガーソングライター、YUNGBLUDの3rdアルバム。サマソニでの盛り上がりも記憶に新しい彼、今作もよりパーソナルな内容が際立つ歌詞を、ポップパンクを軸とした彼独自のオルタナロックサウンドにのせた楽曲の数々は、多くの若いリスナーの心を鷲掴みにしました。
15. Whitney 『SPARK』
米イリノイ州・シカゴ出身のフォークデュオ、Whitneyの3rdアルバム。これまでの彼らの特徴であったフォークロックサウンドが大きく変化し、シンセやサンプリングビートを取り入れて新たな方向性を打ち出した意欲作。個人的には彼らの音楽の中で一番好きなサウンドです。
14. Kokoroko 『Could We Be More』
英・ロンドンを拠点に活動する8人組グループ、Kokorokoのデビューアルバム。タワレコでジャズ・シーンで今大きな注目を集めている彼らは、アフロビート、ジャズ、ソウル、ファンクといったジャンルを横断したサウンドを奏でていて、その音像はフジロックのフィールドオブヘブンで永遠に聴いていたくなるようなうっとりする心地よさ。
13. Muse 『Will Of The People』
英・ティンマス出身の3人組ロックバンド、Museの9thアルバム。全編にわたって印象的なヘヴィなギターリフは、Vo/GtのMatt Bellamyが息子が聴いていたSlipknotからインスピレーションを受けたものだという。曲の展開やコーラスワークもQueenを思わせるような壮大なもの。個人的にはここ直近10年の彼らの作品の中で最もベストな1枚。
12. Courting 『Guitar Music』
英・リヴァプール出身の4人組バンド、Courtingのデビューアルバム。The 1975のアートワークをパロディして話題になったのをきっかけに知った彼ら、前衛的なポストパンクサウンドが軸ながら、王道UKロック的なメロディサウンドも炸裂している非常に興味深い音楽性。今後が楽しみなバンドがまたひとつ増えました。
11. BLACKSTARKIDS 『CYBERKISS*』
米ミズーリ州・カンザスシティ出身のヒップホップトリオ、BLACKSTARKIDSの通算5作目となるミックステープ。毎年のように新作を出す創作意欲の高さにも脱帽していますが、今回は90年代色強めな作風で個人的には『Whatever, Man』(2020)の次に好きな作品。11月からはThe 1975のUSツアーサポートを務めるなど、さらなる飛躍間違いなし。
10. Maggie Rogers 『Surrender』
米メリーランド州・イーストン出身のシンガーソングライター、Maggie Rogersの2ndアルバム。今年のCoachellaでのパフォーマンスが圧巻だった彼女、イメチェンと同時にその音楽性も変わり、力強い彼女の歌唱力が引き立つポップサウンドのアレンジは素晴らしいものでした。今のモードの彼女をぜひともフジロックあたりで観てみたいです。
9. The Lounge Society 『Tired Of Liberty』
英・ヘブデンブリッジ出身のポストパンクバンド、The Lounge Societyのデビューアルバム。乾いたギターの音色に初期衝動が溢れ出るヒリヒリした空気感は、これぞポストパンクと思わせるもの。すでに独自のポップセンスも持ち合わせており、今後black midiのような爆発っぷりを見せそうなポテンシャルの高さを感じました。
8. SUPERORGANISM 『World Wide Pop』
英・ロンドンを拠点に活動する多国籍インディーポップグループ、SUPERORGANISMの2ndアルバム。タイトルとジャケット通りの自由でカラフルな多幸感に満ちた最高ポップミュージック。実験感強めな前作に比べるとかなりまとまりのある印象で、グループとしてのステップアップも感じられる傑作。来年1月の単独来日ツアーはもちろん行きます!
7. Issy Wood 『My Body Your Choice』
英・ロンドンを拠点に活動するアーティスト、Issy Woodのデビューアルバム。Billie Eilishを彷彿させる気だるくダウナーなボーカルとローファイなギターが印象的な独自の音楽性で、これがデビューアルバムなのかと思わず鳥肌が立ってしまう才能の持ち主。ちなみに元々画家としても活動していて、ジャケットは彼女自身が描いた絵なのだそう。
6. Babebee 『Mind Over Matter』
米ジョージア州・アトランタが拠点のシンガーソングライター、Babebeeのデビューアルバム。beabadoobeeのような甘い歌声に、PinkPantherssあたりを彷彿とさせるハイパーポップサウンドが最高に好み。次々と新しい才能が躍り出るベッドルームミュージックシーンにおいてその楽曲のクオリティは群を抜いており、新たなスター候補ともいうべき存在でしょう。
5. Pretty Sick『Makes Me Sick Makes Me Smile』
米・ニューヨーク出身のインディーロックバンド、Pretty Sickの待望のデビューアルバム。デビューEPの時から注目していた、DIRTY HITの次のブレイクアーティスト最有力候補。90年代のグランジの影響を感じるヘヴィかつローファイなギターロックサウンドに、Sabrina Fuentesの気だるくときどきアグレッシブなメリハリあるボーカルが最高にたまらない。個人的に好きなものが全て詰まった最高のデビュー作です。
4. DJ Sabrina The Teenage DJ『Bewitched!』
英・ロンドンを拠点とするプロデューサー、DJ Sabrina The Teenage DJの最新アルバム。The 1975のニューアルバム収録曲「Hapiness」への参加で一躍その名を世界に轟かせた彼女ですが、その才能は伊達ではありません。UKガラージ由来のビートに80年代シンセポップ的グッドメロディが組み合わさり、アルバム全編通して多幸感に満ちた最高なダンスミュージックが展開されています。64ビットのレトロなアートワークも彼女のセンスが光っています。
3. Rina Sawayama『Hold The Girl』
英・ロンドンを拠点に活動する日本人シンガーソングライター、Rina Sawayamaの2ndアルバム。アグレッシブな雰囲気が漂うデビュー作と比較すると、どこか寄り添うような優しさを感じ、歌声もサウンドもよりスケールアップ。このアルバムで彼女は新世代のDIVAの地位を確固たるものにしたといっても過言ではない、それくらい素晴らしいアルバムだと思いました。来年1月の初めてのジャパンツアーで、その世界観を存分に体感できるのが楽しみで仕方ありません。
2. black midi『Hellfire』
英・ロンドン出身のポストパンクバンド、black midiの3rdアルバム。今やUKのポストパンクシーンの顔となりつつある彼らですが、完全にゾーンに入っていますね。前作より導入したホーンセクションを引き続き取り入れつつも、デビューアルバムに似た狂気じみた演奏が目立つ部分も戻ってきました。アルバムを出すごとに良い意味でよりカオスに、「やりたい放題」になっているのがもう最高すぎるといったところ。12月の来日公演は狂乱の宴になること間違いなし。
1. beabadoobee『Beatopia』
英・ロンドン出身のシンガーソングライター、beabadoobeeの2ndアルバム。90sギターロックの影響が濃かったデビュー作から2年、圧倒的なステップアップを遂げた大傑作を作ってしまいました。前作に通ずるオルタナロック調な曲はありつつも、フォークやボサノヴァなど幅広いジャンルを包容し、表現力の幅がぐっと広がったことを感じさせてくれました。Beaが幼い頃に思い描いていた空想世界から着想を得たという『Beatopia』、ドリーミーでバラエティ豊かな14の楽曲からなるそれは、紛れもなく現在の彼女にとっての「理想郷」そのものなのでしょう。
2022年も残すところあと2ヶ月ちょっととなってしまいました。10月はすでにEasy Life、The 1975、Arctic Monkeysと毎週のように多くの新作が出ており、今年の年間ベストは頭を抱えながら選ぶことになるでしょう・・・が、まずはリリースされていくものをどんどん楽しんでいきたいと思います。
Honorable Mention〜プラスの5枚〜
ベスト20からはもれたものの、どうしても紹介しておきたい良作アルバム5選です。
(上段L→R)
The Beths『Expert In A Dying Field』
Death Cab For Cutie『Asphalt Meadows』
Kiwi Jr.『Chopper』
(下段L→R)
Launder『Happening』
Stella Donnelly『Flood』