セルフ解説:「タトゥーに込めた愛」(2024落語協会台本コンクール佳作)
『入選者だけが知ってる執筆のコツ!』
『これを読めば、あなたも書ける入選作!』
と煽り、有料化で稼ぐのも頭をよぎったが、所詮、素人台本作家。そんなコツはわからない。あれば私も喜んで金を出す。
この文章は、2024年落語協会台本コンクールで佳作となった拙作「タトゥーに込めた愛」について、著作権(=入選とともに落語協会保有)を侵害しない程度の大まかなあらすじと、作成経緯や、師匠方による口演実績などの記録のためのメモ。
【作品のおおまかなあらすじ】
推しのアイドルが変わるたびにタトゥーを増やす男と、それを半ば呆れながらも引き受けるタトゥーアーティスト。男は推しの名前と愛の言葉をフォントや配置にもこだわりながら、体中に刻み続ける。さて、その男の行く末は、、?
【執筆から応募まで】
2024年1月某日、ひとりでスーパー銭湯(入墨れ入浴禁止)に行って、湯につかりながら落語台本ネタを考えていた。
他人の裸を漠然と見ながら「好きな女性の名前をタトゥーに彫る奴いるよな。でも嫌いになったら?消す?いや、消さずに『アイラブAちゃん』の後に『じゃなくて、今はBちゃん!』と足していくのもありか、、、」と考え始めると、あれよあれよという間にストーリー完成。この間20分ほど。
考えに考え抜いて、試行錯誤を繰り返し、、、ということはなくストーリーが「天から降ってきた」感覚。
その日のうちに台本化、ギャグとオチもうまく追加できて、数日後の三遊亭天どん師匠の「落語台本講座」に提出。日頃は辛口の師匠から「できてますね」と。受講生からも高い評価。
「これはイケる!」とコンクール応募の第1候補に。その後5月までにこれを超える作品も現れず。台本執筆仲間の青乃家さんにも見てアドバイスもいただき応募。
※天どん師匠は例年コンクールの審査に一切関わってません。念のため。
【入選!】
「最低でも最終選考は行けるんじゃね?」という謎の自信があったが実際入選して感激。応募に際し、原稿用紙10枚程度という「短さ」が気になっていたが、結果、長短は関係なかった模様。
また、その後選考に当たった師匠方のブログを見て1番に入選が決まったことを知りとても嬉しかった。
林家時蔵師匠のブログ
新作落語台本 2 : 林家時藏のこんな話あんな話 (livedoor.blog)
「その結果、一番多く手が上がったのが、ダントツで「タトゥーに込めた愛」」
金原亭世之介師匠のブログ
https://t.co/mf8pAIh9Se
「第一回目の票で一位を取ったのはエントリーNo.68『タトゥーに込めた愛』が最終審査の新作落語台本募集落語会に進出決定しました」
また、口演は柳家はん治師匠となった。噺の主人公は30代位を想定していたので意外だったが、逆にベテランの師匠がどう演じてくれるか楽しみとなった。
発表会当日、残念ながら優秀賞は逃したが、自分の狙ったギャグで狙った通り観客が笑っているのは満足感大。発表会終了後、はん治師匠から「またやるからね」と言って頂いたほか、鈴々舎馬るこ師匠ほか、複数の師匠が口演したいと言って頂いた。感激。
「佳作」受賞以上に、その後もこの作品が実演されることが作者としては何よりも嬉しかった。
【そして実際の口演記録(初演)】
過去の入賞作を見ても、現在も演じられている作品は少ない。発表会(とたまに3月の池袋でのイベント)のみ、という作品が殆ど。まして、複数の師匠が口演!いただける作品は殆どない!そんな中、拙作は下記のような錚々たる師匠方に実演していただいている。プロからその素材を認められた作品!ということである!
謙虚さの微塵もない自画自賛。でも、今が私の台本作家人生のピークかもしれないのだ。少し天狗になってもいいだろう。
2024年11月29日 柳家はん治師匠(「2024新作落語台本発表落語会」@池袋演芸場)
2024年12月10日 鈴々舎馬るこ師匠(「まるらくご爆裂ドーン」@下北DAWN)
2025年1月18日 林家きく麿師匠(林家きく麿弁財亭和泉二人会〜おかしな2人ww〜@亀戸梅屋敷)
2025年1月24日 三遊亭ごはんつぶさん(「帰ってきた!三金落語」@新宿フリースペース無河有)
それぞれの師匠には、各師匠ならでは、のアレンジを加えていただいている。これが、とても参考になる!のである。
「確かに元のままだとこういう疑問が出てくるし、その解消のため、こういうくだりを入れた方がよりナチュラルだし、深みが増す!」とか「なるほど、ここにこういうギャグが入ってくるのか!」とか「ここは確かに削ってもいいな」とか。以上は、原作者だけが味わえる楽しみ方なのだ。フフフ。
【原作者の願い】
原作者としては、この噺が、ウケる噺となり、末永く高座で演じてもらえることを心から祈っている。そのため、この噺がかかることが事前に分かれば、自分は必ず、日程が合えば家族と共に駆けつけて、誰よりも大声で笑おうと思っている今日この頃である。
おわり。
※もし新たな演者が増えれば加筆する予定。