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うさぎになった母と赤ちゃんに戻った子どもの春休み

休んで2週間ちょっと、仕事を辞めて1週間、未だ眠れぬ森のうさぎです。
自分でも変な話だなと思うのだけど、最近はこの迷えるうさぎらしさが、自分の中で立ってきた。

というか、立たざるおえなくなった。今度は子どものメンタルがおかしい。うさぎ母が仕事を休んだ日から、すぐ泣くし、言う事が一段と幼くなった。3歳くらい退行したみたいに。次から次へと待った無しだ。
まるで、うさぎになるのを待ってましたと言わんばかりのタイミングで、突然の赤ちゃん返りが始まった。さめざめと泣いてみたり、ばぶーなどと赤ちゃんの真似をしてみたりする。1時間ごとに抱っこをせがむ。やたらと空想の話が増えた。

ママのお腹に赤ちゃんがいたらどうしようとか(いたらいいと思うけど)学校でいじめられているとか(聞いてみると虐められてる思い込みのようだけど)ママはお化けだとおもってたんだとか(お化けがごはん作るかい)今日遊んでいたら友達が消えちゃったとか(今日外に出てないし)。

記憶が曖昧な話も増えて、去年と昨日の話がゴッチャになる。それとなく指摘すると、あれえ?と笑う。うさぎもそれがおかしいのと子どもの言い方が可愛くて、釣られて笑った。

夜ってどうしたら眠れるの?と聞かれたときは、胸が苦しくなった。どうしたらいいかなぁと一緒にホットミルクを飲んでしばらく話していたら、話疲れて眠った。うさぎはホッとして、ちょっと涙が出そうになった。

どうしたの、突然。パワーゼロのうさぎは、子どもの様子にドキドキした。

でもこれは突然のことじゃないのかもしれない。
子どもはただ黙ってただけで、今まで出せなかったのかもしれない。わたしに余裕がなかったから。

そう思うと、心がチクチクした。痛すぎると落ち込む。落ち込むことにパワーを使ってる場合でもない。春休みは三食ご飯が要るし、少なめの残量は散歩や気分転換に注ぎたい。出来るだけ省エネになるよう、日々が静かに穏やかになるものを選び、それ以外は手放すことにした。

春休みのために随分前から申し込んでいたツアーも、当日になって、行きたくないと泣き出す。ママがひとりで行っていいよ、留守番してるからと言われ、ママが行きたいわけじゃないからとキャンセルした。

今のうさぎには、子どもを無理に勇気付けたり、出来るように励ましたり、何か別の事で埋めるとか、そういうことができない。無理強いはよくないというわけじゃなく、そうする気が起きない。

友達親子と遊ぶ約束をした日も、当日になって、本当は遊びたくないと泣き出された。もちろんなだめる余力もない。キャンセルの連絡をすると、電話の向こうでは相手のお子さんの号泣が聞こえた。

何とか遊べるようにと配慮してくれるママ友には、子どもに譲歩した提案を貰った。これまでなら、やっぱり遊ぼうよ?これならどう?と半ば押し付けのようにしていたけど、もうそんなことすっかり出来ない。ごめんね、今日は体調が良くないみたいで、どうしても難しくて。そう言うわたしの静かな背後を察して、理解を示してくれた彼女に甘えてのっかった。

自分がうさぎになった途端、自分と子どもへの無理強いスイッチが入らなくなった。それがすごく楽だ。

たぶん友達と遊びたがらない理由は、その子が自分よりゲームが上手だからだとおもう。その少し前に一緒に遊んだとき、ゲーム通信対戦で全敗していたのを思い出した。何度やっても勝てなくて、「なんでそんな弱いの?」と言われた後から言葉が減っていき、その子が帰ると、もうこのゲームやりたくないと泣き怒りしていた。

あれが尾を引いていたと思う。たかがゲームなんだからいいじゃないと、あのときはわたしは励ました

でも子どもからすれば、たかがゲームでも、今は言われたくない言葉だったんだろうとおもう。

今は言われたくないことを、言われるかもしれないところには、どこであっても行きたくない。

うさぎになると、その気持ちが痛いほどわかる。ただそれをまだ8歳の子どもが感じているなんて、あまりにもショックだ。

でもショックで不安になって次のアクションを取ろうとする力が入らない。うさぎだから。

そんなこと言うなんてこの先大丈夫なの?社会でやっていけるの?という、これまでオンしっぱなしだった不安スイッチも、全く入らない。もううさぎでしかない。

ゲーム上に理想の一軒家を作る子どもの横で、まあいいか、気持ちいいなあ、とゴロゴロした。パパとママと僕の3人分ベッド作った!とニコニコ笑う子に、キュンとなる。ああ可愛い。

うさぎになると、何もないただ穏やかな時間にキュンとして、胸が温まる。すごく、気持ちがいい。


こういった子どもとのひとつひとつから、自分がうさぎになった足跡をたどっている。これまでの自分の捉え方や思い込みを、客観的なうさぎになって見つめていた。

今のうさぎには、ちょっと前のはずなのに随分昔のようなわたしが、ずいぶん偏り不安に満ちた人のように見える。

うさぎなりの自覚が芽吹き、静かな反省モードに入ったらしい。渦中なのでこの状態がよく分からないけど、むしろ前より不安も自己嫌悪もない。もちろん出来事が起きればそれなりに困惑はする。でも不思議だけど、うさぎになる前よりずっと心地いい。

子どもが赤ちゃんに逆戻りし、母がうさぎになった春休みが、あと1週間で終わるなんて嘘みたい。

求人情報とのにらめっこも終わらない。
学童保育も行かないと言い張るし、夏休みをどう越えよう。

まあそんな先のことはわからないし、いまは子どもと夫の好きなご飯を作ることだけ考えようかな。うさぎのキャパは目の前のことしかないようだし。それに、牛乳と卵にじっくり浸したフレンチトーストは、うさぎも子どもも、大好きだし。