タイムバンク:コミニティで時間を貸し借りする新しい助け合い
1.アンバランスな時間
(…Facetimeの呼び出し音)
ー(無言)
あらコイさん。生きてる?
ー休みがないし、ねむすぎる。
そりゃまあおつかれさまー。やっと週末になるね。
ー早く温泉とか海とか行きたいし、マッサージも行きたい。
大変だなー。コイさんの忙しい時間とわたしの暇な時間を交換してあげたいや。笑
ーほんとだよ!睡眠時間をわけてくれー。
でも、世界中で、この時間バランスの不均衡が起きてるんだろうな。死ぬほど忙しい人もいれば、仕事や学校がなくなって死ぬほど暇な人もいる。スミさんみたいに。笑
ほんとそう思う。あ、それに関連して、最近おもしろい本読んだ。
アンドリュー・ヤンってひと知ってる?アメリカの民主党代表の候補者だった人。
ーいや知らんなあ。
なんかね、この前きいたPodcastのゲストでベーシックインカムについて面白い話してたから、この人の本にも手を出してみたのよ。
ーほほう?
テクノロジーで経済格差が広がる中で、これからどうやって良い社会を作るかっていうのがテーマの本なのよ。
この人自身も起業家なんだけど、テクノロジーが引き起こしてる不平等は、シリコンバレーコミニティでも相当なテーマになってるらしくて。
ーなるほどね。
その中に"Time Bank"っていう概念が出てきて。
ーへえ。初めてきいた。
2.Time Bank:時間をコミニティで貸し借りする
なんかね、市民の自主的な取り組みなんだけど、市町村レベルで全米のいろんな地域にあって。
メンバー同士、暇な時間に、他の人に自分の時間、というか自分の手を貸すっていう仕組みらしいのよ、ペットのお散歩とか、簡単な修理とか、お掃除手伝いとか。
ーおもしろいね。P2Pでの助け合い。
結構すごいんだよ。全米でバンクもメンバーもたくさん登録があって。
このコミュニティは最後に時間が交換されたのが1時間前とか、これまでに5万時間交換されたとか。
ー地域ごとに成立してるわけね。それって合理的だよね。
と、言いますと?
ーいや、全国規模のクラウドファンディングは、美人投票になるとも言われているよね。
つまり、結局プレゼン上手なところに助け集中して、そのほか多くの案件にお金がまわらなくなる。
なるほど。だからコミュニティレベルで、自分の身近に引き寄せた方が助けがまんべんなく行き渡るってことか。
ーそういうこと。
まあ、個人的にはいろんな階層のものがあって良いと思うな。
全国的に、というかビジネスライクにやってもペイするようなレベルから、自分事に引き寄せて成り立つ地域の助け合いのレベルまで。
ーそのとおりだと思うよ。Uberなんかは、今ですら運転手は「全国規模のビジネスUberの社員」みたいになってるけど、元々は地域のレベルから出発したんだろうし。
だから、こういう地元の小さな困りごとを解決するレイヤーも大事だよね。
でしょう。
で、私も今ものすごく時間あるから、こういうのに参加してみようと思って、近くのバンクに登録してみようと思ったわけ。
ーいいね。引退したおじさんおばさんが社会に貢献したくなる気持ちが早めにわかったわけだ笑
そう笑 でも、カリフォルニア州にほとんどなくて!ニューヨークとかフィラデルフィアとかはいっぱいあるのにさあ。
ーあー、面白いね。それ、アメリカのカルチャー的に、東海岸のほうがさかんなのかも。
どういうこと?
3.自助の国・アメリカ…じゃあ日本は?
ーアメリカって元々、プロの政治家や官僚に任せず、自分たちで国を運営する、っていう考え方で出来てるんだよね。
国政に限らず、裁判も陪審員がやるとか、各州、常備軍を設置しないで市民がいざというときに参集するとか。
なるほどね…だから、建国以来の「自助の精神」がより息づいてる東海岸のほうが、こういうことに賛同しやすいのかしら。
ーとかね。
ちなみに、Time Bankは全世界にあるみたいなんだけど、Japanはなかったよ。
日本はちょっと難しいかもねえ。知らない人への警戒心が高いもん。
ーまあ、テクノロジー使って、信頼を補完してまわしていくのかもね。
それなりに多くの人が参加するほど、こういう助け合いの仕組みって効率的にまわるからね。
IDとか、Uberとかの相互評価とか?
ーそうそう。手助けに来てくれた人が、信用できる人なのかわからないと、何となくいやじゃん。
うん。私は自由にプライバシー持って生きていきたいし、ガチガチのムラ社会より、テクノロジーでゆるやかに助け合って生きる社会だといいなあ。
ークラウドソーシングとか寄付とか、必ずしも金だけじゃない、共感とか自主的な気持ちで成立する助け合いの仕組みも最近メジャーになってきてるよね。
こういうものが将来的に社会を補完していくのかも。政府も、そういうデザインが未来の「公共」だって報告書出してた。
なるほど。
それに、わたしはこれ、孤独対策にもなると思うんだよなあ。
日本から遠く離れたアメリカで自宅待機で暇してると、ちょっとは社会のために貢献して、コミュニティにつながりたくなる気持ちわかった。
ー笑。じゃあそろそろ、おれは仕事がんばるわ・・・
がんばれ!
夏にはきっと、いろんなことが良い方向に向かってるよ!
ーそれを願う笑。夜遅くにどうも。じゃあまた~。
はーい。ばいばーい。
(…Facetime終了)
★参考文献★
『The War on Normal People: The Truth About America's Disappearing Jobs and Why Universal Basic Income Is Our Future』Andrew Yang
『NEXT GENERATION GOVERNMENT 次世代ガバメント 小さくて大きい政府のつくり方』若林恵(日経BP)
『21世紀の「公共」の設計図』経済産業省