今和次郎 『日本の民家』
(2020年の37冊目)民俗学者であり、考現学のパイオニアとしてして知られる今和次郎がいまからちょうど100年ぐらい前に日本のあちこちを旅して、各地の民家を調査しまとめた本。建築史的にも、民俗学・エスノグラフィー的にも、民藝方面からも読める名著。すごく面白い。地方によって民家の形態や建築に用いられる資材が異なるというヴァナキュラーなものへの気づきは、かなり早い感覚だと思うし、調査のなかで水害が多い土地に住んでいる人が、水害で家が壊されることを前提として住まうことについて語っていることなどは、現代の「住まうこと」の感覚との距離を大きく感じる。
都会では、働くところ社交をするところは、住宅とは別に建てられるのが普通であるから、住宅を純粋に家族たちの居住の場所として便利で楽しいように作ればいい。(P. 29)
職住や社交が密集した農村や漁村、山村のような社会空間とは違って、職住や社交を分離した前提で建てられた都市の家屋。その延長線上に、都市に住む我々の生活はあるのであるのだが、その前提が大きく揺らぎ、生活が変容している最中にいる。
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