![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/44094831/rectangle_large_type_2_8c01b3b91a54fdf5138de1d2261ecf9b.jpg?width=1200)
折り紙600円いかがですか~の話
私が、フリースクールに勤めていたころ。
とても葛藤した、あるできごとがありました。
それは、小学3年生の男の子が
やりたいことをするための資金作りとして
お金稼ぎをしたいと言った話。
私は、もちろん「いいね!」と共感して
全力で応援することにしました。
「何を売るの??」と聞くと、彼は笑顔で「折り紙!」と言った。
(お、折り紙かぁ~~)
この時点で私の頭の中の常識がどんどん膨らんできていた。
「お、OK!!」 少し動揺しながらも、なんとかそう答えた。
折り紙の本を参考にしながら、意気揚々に折り紙を折り始める彼。
6つほどの作品ができた。一番複雑な作品は折り鶴だ。
さて、お金を稼ぐためには
これらをお客さんに買ってもらう必要がある。
決めなければいけないことは、とりあえずあと2つだ。
・どこで売るか ・いくらで売るか
「どこで売ろうか!」
私と彼はいつも遊んでいる大きな公園へ行くことにした。
この日は、祝日。人はたくさんいた。
「この辺りにしよう…」
彼は、少しシャイな性格だ。
折り紙を折っていたときの意気揚々な笑顔は
大勢の人を目の前に少しばかり消えていた。
悩んだ様子で、結局は彼は
1番人通りが多い場所から
少し離れた場所に拠点を構えることを選んだ。
お弁当箱包みの布を敷いて、その上に作品を並べる。
いくらで売るかは、この時点でまだ決めていなかった。
私は、内心ドキドキしてた。
彼のやりたいことの必要資金は
1000円以上必要だということは知っていたからだ。
紙(値札用)とペンを取り出し
いよいよ彼は値段を書き始めた。
300円、500円、600円…
(この時点で、私の心のドキドキはピークに達した。
少なくとも初めて好きな子に告白したときよりもだ)
(ろ、ろっぴゃくえん!!!)
驚きを隠しつつ、私は彼の選択を尊重することにした。
「これくらいでいいか~」
彼は値札を書いて、笑顔になっていた。
おそらく、すでに売れたような気持ちになっていたのだろう。
彼の人生初めての商売が始まった。
これも彼の成長のためだ!
じろじろ見られることに決して屈してはいけない。
子どもではなく、こういったシチュエーションでは
大人の私のほうが好奇な視線を浴びることを学んだ。
彼はとりわけ「いかがですか~」とかいう
声掛けはしない。
なるほど。職人のように待つスタイルだね。
何分経っただろうか。
私の体感としては、数時間ぐらい
その場にいたような気持ちだった。
彼は、目の前を過ぎていくだけの人たちを見て
この商売を半ばあきらめかけていた。
しばらくして、1人のおばさんが近づいてきた。
(お!買ってくれるのか!?)
何を話すわけでもなく、じろりと折り紙と値札を見る。
私と彼に、緊張感が走る。
「商売は甘くみたアカンで~」
ほほえみながら、そう言って立ち去っていった…
なんとも大阪のおばちゃんらしいひとこと…
私は苦笑いするしかなかった。
このひとことをきっかけに、彼は
「もう帰ろう」
寂し気につぶやいた。
「なんで1つも売れなかったんだろうなぁ~?」
私は、帰り道、振り返りの意味を込めて彼に聞いた。
「ん~~、場所が悪かったんだろうなぁ~」
!!!
「そっか!!!つ、次は、場所を変えてやってみような!」
(ば、ばしょかぁー!価格設定の話は、ぐっとこらえて私はそう言った)
子どもの成長に立ち会う際には
ときに、大きな試練が訪れるものだ。
mk