◤人生◢「いいね」ボタンを押すことは、背中を押すこと。 【#58】
退職を伝えた時に訊かれることは、たいてい「次は“どこで”働くんですか?」。
「何をするか」ではなく「どこで」働くかを訊かれるのは、医療系独特?資格を持っているから?
いろいろな方に訊かれて、「他にやりたいことがあるので、もうOT(作業療法士)は、しないつもりです」と答えるのが面倒になってきた時期があった。
そんな風に決めつけられているようだった。
私はもっと自由になりたかった。
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そんなやりとりの後は、「『やりたいこと』って何ですか?」とさらに訊いてくる方、「そうなんですね〜」と会話が終わっていく方、「勿体ない」と言う方、「頑張ってください」と応援してくれる方、と様々。
そのなかで、「やりたいことって?」と突っ込んで訊く人に対して適当に答えを濁す人と、「ライティングの仕事をしたいんです」と具体的に答える人を、わたしは明確な基準を設けて分けていた。
具体的に答える人は、
と、思えるかどうか。
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人は「知らない」「分からない」ということが怖い。
それは、動物が生まれながらにして備わっている本能である。
「知らない」ことや「分からない」ことに恐怖心を抱かなかったら、生命の危険がある。
だから、それらに恐怖心や疑問符を持つことは仕方ない。
でも「知らない」からと言って、人の夢を心配したり否定しないでほしい。
聞いたことがない職業に、「えぇ?!」とか「大丈夫なん?」とか「食べていけるんですか?」とか。
そんな“負”の反応を見せないでほしい。
それらは素直な反応なのかもしれないが、過敏になっている時期はその素直な反応さえも、夢を「否定」されているような気がした。
ただただ「賛成」してほしかった。
「いいじゃないですか!」「面白そう!」。
現実的な話は抜きにして、そんな“正”の反応がほしかった。
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先ほど、基準を設けて分けていたと書いたが、この方は「どっち側」かの判断は一瞬だ。
それまでのやり取りや普段の雰囲気、患者様への態度など。
それらの総合的な評価を、瞬時に頭で計算した。
計算の結果「この人は大丈夫」と認定した方に具体的に答えると、やはり期待通りの反応を見せてくれた。
一人ひとりの反応は、わたしをご機嫌にし、次のステップを踏むために背中を押してくれた。
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人生いつも前だけを見て進めたら良いけれど、時に立ち止まったり、後ろを振り返ったり、戻ったりすることがある。
自分だけではどうにもならない時、そんな時に必要なのは、誰かがポンっと背中を押してくれることかもしれない。
人の数だけ夢がある。目標がある。
それらに、純粋な気持ちで「いいね!」ボタンを押せる人になりたい。
その「いいね!」の数だけ人は前に進めると思うから。