
映画「どうすればよかったか?」
映画を観てきたので忘れないうちに感想を残します。
タイトルは「どうすればよかったか?」
面倒見がよく優秀な姉に統合失調症の症状が現れた。父と母は、玄関に南京錠をかけ、彼女を閉じ込めた。(公式サイトより)
家族の姿を二人きょうだいの弟の目線で撮影したドキュメンタリー作品。
全国でも限られた映画館でしか上映されず、距離的な面から劇場で観ることは難しいだろうと考えていたので近場の映画館で上映されると知り嬉しく思った。
その一方で、この映画を観た後は確実に重く沈んだ気持ちになると予測していたので少し複雑な感情で映画館に向かった。
予想に反して、作品全体を通して重い雰囲気というわけではなかった。いたって普通(に見えるだけだが)の家族団らんのシーンもあり微笑ましい。
当事者にしかわからない苦しみがある。
第三者の目線で評価するのと当事者になるのは大きな隔たりがある。
「あなた達がやっていることは正しくない」と断じることは簡単だけど、それでは救えない人がいる。
知ろうとすること、伝えていくことが大事。他者からは想像もつかないような苦しみを抱えているかもしれない、と思えたら目の前の人に優しくなれるんじゃないだろうか。
以前テレビで初めてトゥレット症という病を持つ人がいるのを知った。
トゥレット症とは本人の意思と関係なく奇声が出たり同じ動きを繰り返す病気。
こんな病気があることも、苦しんだり悩んだりしている人がいることもその番組を見るまで知らなかった。無知は罪だ。
映画の家族も、今の時代だったらきっと結果は変わっていただろうと思う。精神科の病に対して少しずつ認知度が上がり、偏見も少なくなってきていると感じる。心を病むことは決して珍しいことではないという認識が浸透しつつある。
まだまだ精神疾患に対して偏見が大きかった同じ頃、同じように閉じ込められていた人がたくさんいたんだろうか。
きっと今この瞬間にも苦しんでいる人がいるだろう。
ご両親は娘が精神疾患ではない、なにも異常ではないと頑なだった。
撮影者であり監督の藤野知明氏が母親と父親それぞれと一対一で対話するシーンは、詰められる親側に感情移入して辛いものがあった。藤野監督の主張は超正論で、両親も言葉に詰まる時間があった。
それぞれの、正義がある。
作品の終盤、おそらく80〜90代になったお父さんは、どうすればよかったと思う?と息子である藤野監督に問われ、自分たちのしたことが間違っていたと思わないと答えたのが印象的だった。
自分は間違わない、間違っているはずがないと思うことの危険性を教えてくれている。
どうすればよかったか?
社会全体に投げかけられた重い問い。
作中の出来事は過去のものだけど、問題は今この時も完全に解決などしていない。
答えは無い。探し続けること、考え続けること。
そして、知ろうとすること。伝えること。
今日も私の居場所で、できることを。