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金管楽器の発音メカニズム~息の音の重要性に関して~

はじめまして。

この記事では、
・20年以上トランペットでハイトーンを安定して出すことができなかった人間が安定してHiB♭以上の音を出せるようになった経緯
・その過程で見つけた、金管楽器の発音メカニズム
に関して解説しています。

金管楽器の発音メカニズムを理解することで、楽器を演奏するうえで抱えている何かしらの問題解決のきっかけになれば幸いです。


1.金管楽器の発音メカニズムを研究するようになった経緯


まずは、金管楽器の発音メカニズムを研究するようになった経緯に関して簡単に説明していきます。
記事の本筋とは直接関係ないので、この項目は読み飛ばして頂いても大丈夫です。

20年以上トランペットでハイトーンを安定して出すことができなかった

中学1年生の時に吹奏楽部に入部し、当初はチューバを吹いていましたが高校2年生の時に楽器をトランペットに変更しました。
元々チューバを吹いていたのもあり、トランペットは初めからチューニングB♭の上のF~Gあたりまで出すことができましたが、それより上の音がなかなか出せるようになりませんでした。
トランペットを吹き始めてすぐに地元のプロ奏者にレッスンに通うようになり本格的に指導を受けていたにも関わらず、レッスンに通うのを止めるまでの4年間でこの状態からほぼ進展はありませんでした。
それから、つい最近まで約20年以上の間
・調子が良い時にはHiB♭~HiCあたりまで出せることはある
・調子が良いのは一か月に1~2日程度でそれ以外の日はチューニングB♭の上のF~Gまでしか出せない
という状態が続いていました。

試行錯誤

この20年の間、
・プロのレッスンを受ける
・トランペットに限らず色々な金管楽器の教則本を読む
・金管楽器に関する解説記事(ブログなど含む)を読む
・Youtubeなどの解説動画を見る
など、色々な方法で情報を集め実際に自分で試しながら研究を続けてきましたが、どうしてもハイトーンが出せる時と出せない時の違いがわかりませんでした。

発想の転換

具体的には
・息のスピード
・アンブシュア
・口の中の形状(シラブル含む)
・舌の位置
・口笛を参考にした説明
・息の圧力
・姿勢
・楽器の角度
・音を出すイメージ
など、日本の金管楽器指導において触れられるような項目は全て試したと言っても過言ではないと思いますが、それでもハイトーンを安定して出せるようにはなりませんでした。
そこで、現状の金管楽器指導で行われている方法とは全く違う別のやり方でアプローチする必要を感じ、【そもそも金管楽器はどのようなメカニズムで音を出しているのか】という根本的な部分に関しての研究を始めました。

2.金管楽器はどうやって音の高さを変えているか

まずは、自分自身がどのようにしてトランペットで音を出しているのかを徹底的に研究しました。
そして、最初に気が付いたのは【自分がどのようにして音の高さを変えているのか】についてきちんと理解しておらず、なんとなくの感覚でやっているということでした。
もう少し具体的に説明すると、【低いB♭→F】の簡単なリップスラーを行う時に【具体的に体のどの部分にどのような変化をさせているのか】を正確に説明できない、ということに気付いたのです。

リップスラーの研究

もう少し具体的に説明していきましょう。
一般的にリップスラーのこつとして説明に使われる項目を、一つ一つ分解して【その変化によって音の高さが変わるのか】を確認していきました。
*チェックする項目以外は可能な限り同じ状態を保つようにしています

・息のスピード
息のスピードを変化させることによって変わるのは【音量】であり【音の高さ】は変わりません。

・アパチュアの広さ
アパチュアの広さを変化させても【音の高さ】は変わりません。

・口の中の広さ


口の中の広さを変える位置

口の中の広さを変えると言っても、口の中も意外と広く人によって変えている場所が違う可能性があります。
ここでは、【口の真ん中あたり】と【口の奥の方】をそれぞれ個別に変化させたり両方同時に変化させてみましたが【音の高さ】は変わりません。

・シラブル
口の中の形状を、「お」の時の状態→「い」の時の状態に変えてみます。
すると、このように音が「低いB♭」→「F」と変化しました。

【シラブルを変化させると音の高さが変わるらしい】ということはわかりましたが、高い音の時の状態として説明されている「い」の口の状態で「F」の音が出てしまうともっと上の音を出すのにはどうすれば良いのかがわかりません。

そこで、口の中を「お」の状態から「い」の状態に変化させた時にどのような変化が起きているのか、注意深く観察してみることにしました。

3.息で音を出すとは?

ここで、非常に重要なことを発見します。
それは、トランペットで音を出すとき【唇が振動する前の息の時点で音の高さがある】ことと【トランペットで出す音を変えると息の音の高さも変わる】ということです。
どういうことなのか、実際に見てみましょう。

金管楽器を吹いている方は是非実際に自分でも試してみてください。
楽器を口から離した後に【口を軽く開ける(アパチュアを広げる)】のがポイントです。(アパチュアが閉じていると息の音が聞き取りにくい)
このように、トランペットでB♭の音を出している時は息でもB♭の音、トラ
ンペットでFの音を出している時は息でもFの音を出しているのです。

つまり、【トランペットで出そうとしている音に対応した高さの音を息で出すこと】が非常に重要であることがわかりました。

高い音を出せる時と出せない時があった理由

この【息で出している音】というのは今まで全く気にしたことがありませんでした。
そこで、息の音だけでチューニングB♭からHiB♭までの1オクターブを出すことができるのかを確認してみました。
すると、Fあたりから何の音を出しているのかの判別が怪しくなり始め、HiB♭の音を出している(つもりになっている)段階では何の音なのか全く判別ができない状態であることがわかりました。
この状態で実際に楽器を吹いてみると、このように高い音を出すことができません。

次に、どの音を出しているのかはっきりわかる状態になるまで息だけで音を出す練習をしてから実際に楽器を吹いてみたところ、楽器でもHiB♭の音が安定して出せるようになっていました。

この事実を発見してから現在まで約二か月が経過していますが、常にHiCisあたりまでの音を安定して出すことができています。
これは、それまでの約20年間一か月に1~2回程度しかHiB♭を出せなかった状態から比べると目覚ましい進歩です。

4.息で音を出すことを意識すると何が変わる?

詳細は別の記事で紹介する予定ですが、簡単にまとめると次のような変化があります。

響きの豊かな音が出せる

息で音を出していることを理解することで、息を効率よく音に変換することができるようになります。
それにより、楽器を最大限響かせた豊かな音が出せるようになります。

リップスラー、スラーが滑らかに吹けるようになる

リップスラーやスラーが上手くいかない原因のうち最も大きいのは「次の音を出すために最適な体の状態を作り出せていない」という点にあります。
息で出している音を確認することで、「最適な体の状態」を理解する手助けになります。

5.どのような方法で息の音の高さを変えている?

【息の音の高さ】が重要であることはご理解いただけたかと思いますが、そもそも【息の音】というのはどこで出しているのでしょうか?
また、どのような方法で【息の音の高さ】を変えているのでしょうか?
これに関しては、現在研究を進めているところなのであくまで仮説になってしまいますが、現時点で「こうじゃないかな?」と思っている内容について解説していきます。

ささやき声・ひそひそ声

ささやき声やひそひそ声と呼ばれる話し方をする時、声帯の振動しない無声音と呼ばれる音が出ます。
この無声音が息の音の元になると考えています。

息の音の高さのコントロール

では、肝心の息の音の高さはどこでコントロールしているのでしょうか。
あくまで現時点での仮説ですが、リップスラーの研究の際に行った【口の中の広さの変更】で調査した【口の真ん中あたり】【口の奥の方】よりさらに奥にある【声帯の付近の筋肉】を使ってコントロールしていると考えています。
この付近の筋肉を使い、息の通り道を狭くすると音が高くなり広げると音が低くなっている可能性が高いです。
このあたりに関しては、引き続き調査を続け何かわかり次第新しく記事で紹介する予定です。


~~~~~~~2024/11/30 補足~~~~~~~

その後の研究で判明した、息の音はエッジトーン(のようなもの)ではないかという仮説について下記の記事で解説しています。
こちらの記事で【息の音を変える具体的な方法】に関して解説しているので是非ご覧ください。

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6.補足

誤解のないように補足しておきますが、今回解説した【息の音の高さ】に関する内容はあくまでも金管楽器の音を出す上で重要な要素の一つにすぎません。
これ以外にも
・アンブシュア
・楽器の角度
・姿勢
など重要な要素があるため、息の音のコントロールをマスターすれば全ての問題が解決するわけではありません。
しかし、【息の音の高さ】に関して詳しく説明している記事や動画は他に見たことがありませんし、多くの方は初めて聞く情報だと思います。
私が見た中で最も近い説明として【口笛を吹くときの状態を参考に】というものはありましたが、具体的には【口笛を吹くときの舌の位置を参考に】というような説明であり【実際に口笛で出している音と楽器で出している音を関連付けているものではない】ため、これは別物だと思っています。

もしかすると、すでに同様の情報を紹介している人がいるかもしれませんが、少なくとも【誰でも知っているような情報】と言えるほど広まってはいないと思います。
この情報を広めることで、トランペットに限らず全ての金管楽器においてハイトーンが安定して出せずに苦労している人の問題解決のきっかけになればと思っています。

7.まとめと次回予告

今回の記事をまとめると、重要なのは下記の二点です。
・金管楽器で音を出すには、その音に対応した高さの音を息で出す必要がある
・息の音は、ささやき声を出すときの無声音を基にして声帯付近の筋肉の動作で高さのコントロールをしていると思われる

次回は、【金管楽器の指導において、息に関するアドバイス(息を細くする、口の中を狭くする、シラブルなど)が上手く伝わる場合と伝わらない場合があるのは何故か】について解説する予定です。

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