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砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない/桜庭一樹


誰が読んでいたのか、勧めていたのかも
もはや思い出せない。
なんとなく小説が読みたくなって図書館で借りてきた。



初めの1ページ目に書かれていることだから
ネタバレかどうかもわからないのだけど、
謎多き美少女中学生、海野藻屑は
殺されてバラバラにされ、山に捨てられた。


主人公の山田なぎさは飼育係。
中学校でうさぎのお世話を任されている。
そして家に引き篭もる美しい兄のお世話も。


山田なぎさの中学校に、海野藻屑が転校してくる。
冒頭で遺体で発見されている藻屑が生きて出てくるということは、
藻屑の登場から死までが、結末にかけて流れていくということ。
私はわりとこの手法が好きなタイプなんだと思う。



山田なぎさは『実弾』を欲している。
『実弾』以外は何も反応しない、何も関わらない、くだらないと思っていたのに。


海野藻屑は、砂糖菓子の弾丸を撃ち続ける。
甘ったるくてべたべたして、どうしようもない飴玉みたいな嘘。
その砂糖菓子の弾丸が、なぎさをどうしようもなく揺さぶりつづける。

藻屑がなぎさの父のことを語った時、なんて無神経な少女だと内心思ってしまったけれど、
あれが藻屑の精一杯。
友達に向ける精一杯の弾丸。
藻屑には愛情と憎しみの違いがわからない。

藻屑の砂糖菓子に巻き込まれて、
クラスメイトの花名島も、兄の友彦も、なぎさも。
藻屑は、毒にも薬にもならない砂糖の弾丸を撃ち続ける。


ラストはどんでん返しとかはなく、
やっぱりそうか、というような結末なんだけど、
絶望とも希望とも言い得ない、
セピア色の港が目に浮かぶような。
湿り気を帯びた生暖かい風に包まれたような気持ちになった。


2時間ほどで読めて、
自分を全く違う世界に連れて行ってくれる小説は
やはりすごい。
桜庭さんの本は初めてだったけれど、もっと読んでみようと思う。おすすめです。

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