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読めていないからテンポを遅くしがちになる

ブラームスop68を第1楽章を読んでいると、幾何的なパズルのような組み合わせの面白さを見ている気がする時がある。カレイドスコープ的な面白さがここにはある。逆に言えば描写音楽的な作品を聴くのに慣れている人には分かりにくいとも言えるだろうけれど。ただ演奏者側としては、その難解な読み解きを明解にやってのける面白さがこの作品にはある。

さて、その面白さの一端は序奏と主部の関係にも見られる。序奏は4拍子の骨格と3拍子の骨格の折り合わせでできていたが、主部もその両者の見事に連携から始まっている。

Allegroの開始はその音楽が4つの小節を分母としていることを宣言している。しかし、その分母がさらに大きな3拍子を構成していることは見落とせない。つまり、それは序奏の作り方とも関連があるからだ。
その大きな3拍子は、続く部分で、さらに、3つの小節の分母に圧縮され、それが大きな3拍子を形成する。

このような形成の変転は、しかし,闇雲なそれではなく、序奏が成してきた3と4の組み合わせの約束の上で、成り立っている。

演奏がその論理的な変転を読み取れていないと、この音楽を御すことはできない。テンポが遅い演奏になってしまうのは、その変化に振り落とされそうになるからなのだろう。要するに読めていないからなのだ。

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