2022-03-21


わたしは昔から人との間に薄い膜のような隔たりがあって、わたしを好意的に見てくれる人はそれを気遣いだとか何だとか名前をつけてくれる。何か少しでも相手の繊細な琴線に触れてしまいそうな事柄そっくりそのままを、ほぼ本能で避けたやり取りをしている。本心では違うと思っていても、「せやな」でやり過ごしてしまうことが多いので、核心を突いた会話に内心恐れおののいている。 

そのせいかあまり友達はいない。そのせいかというよりも完全にそのせいだ。深く思ったことや感じたこと、腹がたったことほど言わない。言えないに近い。人にどう思われるか不安なのではなくて、言った瞬間に相手のものになるような気持ちになるからだ。言わなければすべて自分のもので、誰にも自分を脅かされることはないからだ。自分をプチプチのクッションで覆って覆って、その上に大して必要のないもの、その上にどうだっていいものを置いてガムテープで蓋をしている。アマゾンの過剰包装のよう。

そのぶん人から好かれるのは上手くて、嫌いだ。だからあのときやその瞬間、プチプチのクッションを誰かが剥いでくれるのをじっと待っていた。その誰かを、もう随分長い間渇望している。

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