【1000文字読書感想文】あると思います!『霧のむこうのふしぎな町』
小学生の頃に大好きだった本の話。
柏葉幸子さんの『霧のむこうのふしぎな町』(講談社 青い鳥文庫)
いいんだ、これ。
小学生の女の子リナが夏休みに訪れた霧の向こうにあったふしぎな町。その町で出会うちょっと変わった人達との物語。
こんな町、あるわけない。でも、あるかもしれない。
なぜかそんなふうに感じさせるリアリティ溢れる描写がほんっとに素敵。
赤くて大きな鼻の発明家、イッちゃん。絶品のサンドイッチをつくるコックのジョン。いじわるなのにどこか憎めないピコットばあさん。
不器用で、なんだか凸凹(でこぼこ)してて、温かくて。そのにじみ出る人間臭さに「あー、こういう人いるいるー」ってなるんだよなぁ。
あ、あと私が特に好きなのは、作中に出てくる色の表現。
『六月の風の色』『十一月の海の色』『西にしずむ太陽の色』...
素敵な表現すぎません?w
どれも「この色!」って説明できないけど、その文字を通じて頭の中に色のイメージが広がっていく感じがするから不思議。きっと私はその色を目にしたことがあったのよね。でも、日常の中に埋もれてしまっていたんだなぁってしみじみしてしまった。
発明家のイッちゃんがリナに言った「いままで気がつかなかったんでしょう。西にしずむ太陽を、見ようともしなかった。」という言葉がグサグサ刺さる。
(『西にしずむ太陽の色』こんな色かな...)
この本を読んで、大人になっていくうちに想像力がどんどん乏しくなっちゃったんだなぁって感じた。小学生の頃に読んだときは、もう胸がドキドキして、リナといっしょにこの町で暮らしていたような高揚感を感じてた。
今、大人になって改めて読み返すと、カチコチに固まってしまった大人脳にハッとする。
この本の中には想像する楽しさや、日常の中にある小さな感動がいっぱい詰まっている。
こんな町、あるわけない。でも、あるかもしれない。
...うん。あると思う。
あると思います!吟じます!
(いけそうな気がする~!)
少しでも興味を持ってくれたら、ぜひ読んでみてください。
子供向けの本と侮るなかれ。きっと素敵な旅になることでしょう。
大人になるにつれて当たり前になってしまって、薄れていく小さな喜びやぬくもりを思い出させてくれる一冊。
脳みそを柔らかくしたい人におすすめ。
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