【2024 読了 No.53】二宮謙児著『山奥の小さな旅館が連日外国人客で満室になる理由』(あさ出版)読了。
作者は大分県由布市湯布院町の「湯平(ゆのひら)温泉」の老舗、山城屋のご主人。湯平温泉は、温泉の役割が湯治が中心だった時代は「西の横綱」と呼ばれる程有名だったそうだが、お隣の由布院が人気が出るに従って、寂れていったらしい。
【2024 読了 No.52】の著者と違って、著者が実際に旅館を経営して、インバウンド需要の取り組みに成功しているので、書かれていることはとても具体的なことばかりで、とても有意義な読書体験となった。
著者は地元の信用組合に勤務していたのを、奥さんの実家である山城屋を継いだそうだ。元々スポーツが好きなこともあり、湯平に定住後、地域活性化のために、スポーツイベント「ツール・ド・湯平」を開いた。更にお隣の韓国の自転車レースに、実行委員四名と選手四名で「チーム・ツール・ド・湯平」を結成し初参加を果たし、揃いの法被まで着て、しっかり湯平温泉をアピールしたという。
著者は行動力と発信力がすごい。
熊本の地震後も、風評被害からキャンセルが相次いだが、著者はいち早く、山城屋やスタッフの無事をFacebookで発信した。
Facebookといっても侮る無かれ。口コミサイトのトリップアドバイザーや、海外OTA「ブッキングドットコム」などにワンクリックで誘導できる仕組みにしている。外国人は、全体の七四%が「個人旅行者」だそうで、このような口コミサイトをとても参考にする。
ところで、私が連続してインバウンド産業に関する本を続けて読んだのには訳がある。
一つは、せっかく身に付けた語学力を活かせないかと考えるようになったから。
もう一つは、我が横須賀市を、インバウンド需要で活性化できないか考えるようになっからだ。
語学は日本人は苦手意識が強い人が多いし、一方で力のある人が生かす場を持てないでいたりする。
どちらも、もったいないことである。
著者の奥さま、要するに旅館の女将さんは、外語大の英文科(どこの外語大なのかは知らない)を出ているので、英語は堪能である。一方で韓国語、中国語、タイ語も勉強している。
英語力を活かし、更に自己研鑽に励むなんて、素晴らしいと思う。
著者は言う。
「語学は、インプットしてもアウトプットする機会がないとなかなか身につかないといわれます。有難いことに、私たちの仕事は、毎日外国人と接する機会に恵まれていますから、毎日アウトプットできるのです。……しかも、発音がおかしいときは、ネイティブのお客さまが教えてくれることもあります。毎日、家庭教師の先生が来てくれているようなものです。」
ここ、とても素晴らしい考え方だと思った。国が違えばお国柄も違う。それをユニバーサルランゲージである英語を通して学ぼうなんて、謙虚で前向きな素晴らしい姿勢だと思った。
謙虚でかつ前向きな人は、死ぬまで伸びてゆく気がする👏
また、私の観光地での外国人にする自己紹介もそうだが、自己紹介や旅館での案内フレーズは、会う人度に変える必要なんてない。
ある程度の定型文を英語であらかじめ用意しておいて、何回も使えば流暢になっていく。
また、著者は地元の高校生にも改善点を率直に聞く。
なんて、謙虚な姿勢なんだろうか。
高校生からのアドバイスに、「アジアの外国人は日本のアニメが好きだと聞いたことがあるので、『ワンピース』や『ドラゴンボール』などの英語版の漫画本を置いたらいいんじゃないかと思う」というのがあったそうで、早速取り入れている。
本職の予備校の仕事に役にたったのは、
「位地図」。 例えば、大分県の○○市の観光ポスターは、大分県の地図だけを表示して、○○市の部分を目立つようにデザインしたものだった。これはいただけない。
土地勘のある日本人ならこれでいいでいいかも知れないが、そもそも外国人には九州自体が、日本のどこに位置しているのか知らない場合も珍しくない。
小さくてもいいから日本全体の地図と、そこからピンポイントで拡大した地図の両方を載せる必要があるわけである。
私も戦後史のプリントは、パレスチナはアフリカとアラビア半島も含めた広域地図を載せてから、パレスチナ地方のピンポイント地図を載せている。今後はベトナムやキューバも、広域地図を載せた上で、現在使っている地図に繋げようと思った。
具体的な工夫はアイデアを盗んで応用できるので、他業界の本も参考になる。