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【読了 2024 No.29】小宮信夫著『-見てすぐわかる犯罪地図-なぜ「あの場所」は犯罪を引き寄せるのか』(青春新書)読了。

犯罪学では、不審者や怪しい人等、人に注目する立場を「犯罪原因論」と呼び、場所に注目する立場を「犯罪機会論」と呼ぶそうだ。

この本は、「犯罪機会論」について紹介している本である。

 著者の主張する通り、「不審者」という言葉があるが、外見だけでその人が犯罪を企てているか否かを判断するというのは、かなり無理があるかもしれない。著者は更に言う。「誘拐犯という人間は児童心理のスペシャリストであり、したがって子どもは簡単にだまされる」。確かに言われてみればそうかも知れない。「俺はこれからお前を融解するぞ」なんて言って近づく誘拐犯や変質者はいない。

「ハムスターを見せてあげるよ」等、子供の喜びそうなことを言って連れ出すわけなのだ。

 その点、「『人』はウソをつくが、『景色』はウソをつかない」。だから、防犯のためには危険(そう)な者をあぶり出すことより、危険な場所に対するセンサーの感度を上げて、危険な場所に近づかなくするか、危険な場所を改善していく努力こそ必要になって来るわけである。

「危険な場所」とは、端的に表せば、「入りやすく見えにくい場所」である。

どんな所が危ないのか?を判別する力(作者は景色解像力と呼んでいる)を養うために、以下のような絵を見て、「どちらが危ないか?」を答えさすエクササイズがいくつかあった。


どちらが危ないか?

 

これはなかなか効果的だったと思う。

ところで、「入りやすく見えにくい場所」の代表は公衆トイレであろう。
実際、「トイレは犯罪の温床」と呼ばれるらしい。公衆トイレを犯罪者にとって「入りにくい」場所にするには、被害に遭いやすい女子トイレを「男性がスッと入り込むのを防ぐため、奥まったところ」に配置する等、きっちりゾーニングするのが望ましいと作者は主張する。その点、日本の「だれでもトイレ」は犯罪者に利用されやすいわけだ。

だが、この本は2015年が第1刷であり、この頃は性同一障害問題は大きな問題になってなかったし、渋谷区の「男子用」と「共用」しかないトイレ問題等もなかった。

公衆トイレは共用化が流れみたいなのだが、犯罪抑止という観点から見れば、やはりこれは望ましくないといえるのだなと思った。

残念だったのは、第5章の「日本人の防犯意識はなぜ低いのか」。これははっきり言って要らなかったと思う。日本の歴史や文化の専門家でも何でもない著者が書くべきものではない。

むしろ、特に作者が本の中で何度も称賛する「景色解像力を高める地域安全マップ」の具体例をきちんとのせてほしかった。

安全マップの理想形については、写真がたった一枚しかなかった。しかも、何が書いてあるのかも判別できない写真だった。これでは、著書をを参考に「景色解像力を高める地域安全マップ」を作ろうと思ってもできない。

参考文献の列挙も無いので、せっかく「犯罪機会論」という概念を知ったのに、それを発展できない。

門外漢なところを書き足すより、専門分野を素人にも分かりやすく書くのが新書ではないか?


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