【2024読了No.13】楠木建著『好きなようにしてください-たった一つの仕事の原則-』(ダイヤモンド社)読了。
珍しくKindleで読んだ。(だから犬の写真なし)
この本は元々Newspicksというニュースキュレーションサービスサイト(有料)に連載した、「楠木教授のキャリア相談」という連載記事が母体で、それに加筆修正したものである。
楠木教授は一橋大学大学院の教授。専攻は経営学。
主な著書に『ストーリーとしての競争戦略』がある(まだ読んでません。次に読む予定)。
相談に対して、「好きなようにしてください」では、何の回答にもなってないような気がするが、実は相談に対する回答よりも、その後に続く余談としての仕事論がいい。
なんとなくペーソス感漂うユーモアが効いていて、読んでて楽しかった🤭。
ペーソス感漂う文の最高傑作はご自身のハゲに関する話。
例えがとんでもないくせに、すごく本質をついていた。長いけど直接引用したい。私ごときが変に要約しちゃったら、その良さが伝わらないからね。
身近な「悪あがきする人」を思い出して思わず吹き出して🤭しまった。
それだけではなく、「ナチスドイツのフランス侵攻のような電光石火の電撃戦」という、とんでもない所から引っ張ってくる比喩がたまらなく愉快。比喩のぶっ飛びぶりは万事この調子で、ここだけではない。このノリが気に入った方は、是非この本を購入して楽しんで貰いたい。
真面目な話では、楠木教授は「キャリア・コンセプト」という概念にこだわっている。何度かこの単語が出てきた。
この方の「キャリアコンセプト」とは、一言で言えない位深いのだが、敢えて簡単にまとめてみれば、「仕事への心構え」とか「自分が仕事に関して奥底で譲れない部分」ってとこだろうか。
上記の解釈が正しいかわからないが、楠木教授のキャリアコンセプトの一つは、仕事は他人のためにすることで、その他人に喜ばれて入金されて初めて成り立つということとしている。自分のためにするのは趣味だと、両者をしっかり分けている。
…ちなみにご本人は趣味の方もかなり力を入れていて、エレクトリックベースを演奏するそうな。ただし、自分たちのバンドのコンサートに来て貰う人のことは「お客さん」ではなく「犠牲者」と考えているらしい。
こんな自虐的表現もまた楽しい。
閑話休題。
大学教授という仕事を芸者に例えている。だから、大学は「置き屋」になる。この例えもなかなかぶっ飛んでいて愉快だった。
経営学の大学教授だから、相手は「学生」がメイン。また、他経営アドバイザー的な仕事もしてるので、「経営者」が相手のことがある。
例え相手が「学生」であったとしても、教授の仕事に臨む心構えは、変わらない。
ここから以下は、この本の内容を私に当てはめて考えてみたもの。
予備校の講師である私にとっては、生徒が“お客さん”である。
そのお客さんが求めている授業は、知的好奇心の満足という高尚なものはなく、大学受験に特化した即効性高い特効薬的なものである。
彼らの多くは日本史は特に好きではない。
彼らに「好きになって欲しい」と、日本史の楽しさを強調するのは、頑な心を持つ生徒の心には意外に響かないようである。
頑な心を持つ生徒は、人一倍不安を抱えやすい。こういう生徒には、彼らが抱えている入試問題に対する「不安」を解消するアプローチ、つまり最新の入試問題の解説から入った方がいいなと考えている。
自分が好きな歴史の話を好きなように話すのは、趣味であって仕事ではない。限られた時間の中で、どれだけ効果的に生徒の学力を上げられるか?
そのためには何が必要か?
その答えをこの本から引用して感想文を終わりにしたい。
そう、大切なのは、わかりやすく伝える技術だよね。それは池上彰氏も強調していた。
【2024 読了No.11】の細谷氏は「わかりやすさを求める傾向」を批判していたけど。
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