【読書】ファクトフルネス
ハンス・ロスリング他 著の「ファクトフルネス」を読んだのでまとめておきます。
この本はTEDトークなどでも有名なハンス・ロスリングが息子オーラとその妻アンナとの共同作業で執筆し、ハンスの遺作となったものです。
ファクトフルネスとは
人間の脳は何百万年にもわたって進化してきたものであり、狩りや採集をするために必要だった本能が組み込まれています。
例えば、差し迫った危険から逃れるために一瞬で判断を下す、かつては有効な情報源だったうわさ話やドラマチックな物語に耳を傾ける本能などです。
数千年前には役に立ったこれらの本能は、いまでは私たちがありのままの世界を見るためにじゃまになってしまっています。
この本では、
人間にそなわる10の本能・思い込みを乗り越えて、データをもとに世界を正しく見る習慣を身に着けること=「ファクトフルネスの実践」
を提唱しています。
ここから、10の本能とそれらを抑えるために気を付けるべきことをまとめていきます。
1.分断本能
…「世界は分断されている」という思い込み
様々な物事や人々を2つのグループに分けて、その2つのグループの間には決して埋まらない溝があるはずだと思い込むというものです。
(例:世界の国々には「豊かな国」と「貧しい国」に分けることができる)
2.ネガティブ本能
…「世界はどんどん悪くなっている」という思い込み
人は誰しも物事のポジティブな面よりもネガティブな面に注目しやすくなっています。それにより、「世界はどんどん悪くなっている」という勘違いが生まれ、暗い気持ちになったり、何をやっても無駄だと無気力になってしまうことにつながります。
3.直線本能
…「グラフは直線になる」という思い込み
「人口はこのまま増え続け、そうすればいずれ地球が滅びる」と考え、貧しい子供たちを助ける財団に文句を言う人々がいます。
実際には子供の志望率が下がり教育水準が下がれば、国や文化に関わらず人々は子供に良い教育を受けさせたいと考えて、産む子供の数は減っていきます。
「人口が増え続ける」と考えてしまうのは、「グラフは直線的になる」と思い込む直線本能が働いているからです。
4.恐怖本能
…「危険でないことを恐ろしいと考えてしまう」思い込み
人は誰しも「身体的な危害」・「拘束」・「毒」を恐れていますが、それがリスクの過大評価につながっているのです。恐怖に包まれると判断力が鈍ってしまうためです。
5.過大視本能
…「目の前の数字が一番重要だ」という思い込み
人間は物事の大きさを判断するのが下手です。その理由の一つがこの「過大視本能」です。過大視本能によって2つの勘違いが生まれます。
1つ目は、数字を一つだけ見て「この数字はなんて大きいんだ(または、小さいんだ)」と勘違いしてしまうこと。
2つ目は、一つの実例を重要視しすぎてしまうこと。
6.パターン化本能
…「ひとつの例がすべてに当てはまる」という思い込み
人はいつでも何も考えずに物事をパターン化し、無意識にそれをすべてに当てはめてしまいます。一方で、それが思考の枠組みを作ることでもあるので、生きていく上でパターン化は欠かせないものでもあります。
パターン化を止めようとすべきではないし止められませんが、間違ったパターン化をしないよう分類を疑うことが必要です。
7.宿命本能
…「すべてあらかじめ決まっている」という思い込み
色々なもの(人・国・文化)が変わらないように見えるのは変化が少しずつゆっくり起きているからです。それでも小さな変化が積み重なれば、大きな変化になります。
8.単純化本能
…「世界はひとつの切り口で理解できる」という思い込み
私たち人間はシンプルなものの見方に惹かれます。そんな風に世界をただ一つの切り口で見れば、あれこれ悩まずに時間の節約になります。
それでも、様々な角度から問題を見た方が物事を正確に理解でき、現実的な解を見つけることができるのです。
9.犯人捜し本能
…「誰かを責めれば物事は解決する」という思い込み
人には何か悪いこと・良いことが起きた時に単純明快な理由を見つけたくなる傾向があります。しかし、誰かを責めると他の原因に目が向かなくなり、将来同じ間違いが起こることを防げなくなります。
10.焦り本能
…「今すぐに手を打たないと大変なことになる」という思い込み
目の前に危機が迫ってると感じると、「焦り本能」のせいですぐに動きたくなります。批判的に考える力が失われ、拙速に判断して行動してしまうのです。しかしながら現代の生活では差し迫った危機はほとんどなくなり、もっと複雑で抽象的な問題にぶつかることの方が多くなっています。
まとめと感想
ここまで個別の本能の特徴と対策をまとめてきましたが、なによりも謙虚さと好奇心を持つことが大切とされていました。
本能を抑えて事実を正しく見ることの難しさに気付くこと、自分の知識が限られたものであると認め、堂々と「知りません」と言えること、新しい事実を発見したら喜んで意見を変えられること。
大学院で研究をしているときに、指導教官から研究者の心得として「自分の知識の限界を認め、新事実がわかったら意見を変える勇気をもつこと」と口を酸っぱくして言われたなと思いだしました。
その経験のおかげでデータに基づいて柔軟に物事をみるということは少し訓練できたかなと思いますが、
最近の生活を少し振り返っただけでも、「単純化本能」や「焦り本能」なんかにまだまだ支配されていたなと感じるエピソードがあります…。
意識化することが大切だと思うので、完ぺきに思い込みから逃れるのは難しくても、時々振り返って気付いていきたいです。
以前読んだ「予想通りに不合理」も同じよう観点から人の思考の特性が説明されているので合わせて読むと面白いのではと思いました。
最後までお読みいただきありがとうございました!
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