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マサイ族の青年とカバを見つめながら、「自分」について考えてみた

私達は、日々悩んだり葛藤したりしながら生きています。
今度こそダイエット成功させるぞ、と思っているのについ誘惑に負けてしまったり。毎日読書する習慣を身につけて知的な人間になるんだ、と決心したのに三日坊主で終わったり。大人げないと分かっているのに人前で不機嫌な態度を取ってしまい、後から自己嫌悪に陥ったり。

なぜ私達は自分の思うように行動出来ないのでしょうか?
それは、「私」の中には実はたくさんの「私達」がいるからなのです。
今回はそんな心理学のお話!
 


マサイ族の青年の話


数年前、アフリカのケニアに一人旅に行きました。
多くの野生動物が生息するマサイマラ国立保護区の中にあるロッジ型ホテルに宿泊し、毎日車にゆられて周囲に生息するライオンや象、キリンなどの動物たちを見に行きました。
それ以外にもホテルでは毎日ショートツアーが開催されていて、マサイ族のガイドがホテル周辺を歩いて案内するウォークツアー、という小一時間のショートツアーにある日申し込んでみました。

集合場所に行ってみると、その日は参加者が私しかいなかったようで、マサイ族の青年ガイドに連れられて徒歩でウォークツアーに出発しました。
マサイ族の青年ガイドの名はヨッツン。
民族衣装に身をつつみ、腰には護身用に剣を差していました。
ホテルの脇には茶色く濁った川が流れていて、川沿いの茂みの中を2人で草をかき分けながら歩いていたのですが、ヨッツンがおもむろに対岸を指さして「ほら見えるかい、あっちにワニがいるよ」と声を潜めて教えてくれました。
少し離れた川中にはカバの群れの姿も見えます。

ヨッツンは茂みに生えている小枝を手で折ると、「これで歯ブラシが作れるんだよ」と言って、腰に差した剣をすらりと引き抜き器用に小枝の先を削りはじめました。削った小枝を手渡してくれたので、さっそく口に入れて固い枝をガジガジ噛んでみる。次第に枝の先がブラシ状に分かれてきたので、それでもって歯をシカシカ磨いてみました。
ワニやカバを遠くに眺めながら、並んで座り黙って歯を磨く二人。(シュール。)

おもむろにヨッツンが「日本にもこんな大きな川はあるの?」と聞いてきました。目の前にあるのは、25m泳ごうとすると溺れかけるカナヅチの私でも余裕で泳いで渡れそうな幅の川。(つまりそんなに大きくない)
「日本にももっと大きい川いっぱいあるよ!」と答えると、ヨッツンは「ワニとカバも住んでる?」と。
「いやワニとカバはいない…。魚と鳥ぐらいかな。」と笑って答えると、ヨッツンはとても不思議そうな顔をしておりました。


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マサイマラ国立保護区で撮ったライオンの写真。かなり近くまで接近出来る。



サブパーソナリティ


という話は余談ですが。(余談長い)
私達は知識として、アフリカのサファリにはライオンや象が住んでいる事を知っています。日本の川に何が住んでいるのか知っているかと聞かれたら、正直言うと本当はよく知らないですが。少なくとも野生のワニやカバなんていない、という事は知っています。
それでは、最も身近な自分自身の中には一体何が住んでいるか、果たして答えられるでしょうか?
なに言ってるんだ、自分の中には自分しかいないじゃないか。気持ち悪い事言うな、と思うかもしれません。ただ、私達の中には一貫したたった一つの人格しか存在しないわけではなく、沢山の異なる人格達が存在しています。
心理学で、サブパーソナリティ(副人格)と呼ばれる存在です。

誰でも覚えがあると思うのですが、親の前にいる時の自分と、恋人の前にいる時の自分、厳しい上司と対峙している時の自分と、後輩を指導している時の自分、気心の知れた友人といる時の自分など、一緒にいる相手や状況によって、少しずつ異なるキャラクターの自分なのではないでしょうか?
他人に優しく慈悲深い気持ちになれる日もあれば、攻撃的な気分になったり、ずる賢く冷めた自分になったりする事もあるのではないでしょうか。
こうした多様性は、全て異なるサブパーソナリティ達の存在によるものです。
怒りん坊パーソナリティ、几帳面パーソナリティ、怠けものパーソナリティ、努力家パーソナリティなどなど、一人の人間の中に時には相矛盾する沢山のサブパーソナリティ達が存在し、それが状況に合わせて、あるいは外からの刺激に反応して入れ替わり立ち替わり顔を出しているのです。 


私を守る、たくさんの私達


私達がこの世に生まれてから社会に適応していく過程で、サブパーソナリティ達は生まれてきます。みんな性格は異なりますが、生まれてくる理由はただ一つ。
私達を守り、生かすためです。
幼少期に親の愛情と庇護を獲得するためには「良い子でいなければ愛してもらえない」と感じた時、親の言う事に従う従順な「良い子パーソナリティ」が生まれたり。
大人しい性格のために学校でいじめられそうになって「みんなの人気者になれば居場所が得られる」と感じた時に、「陽気パーソナリティ」が生まれたり。(例えばです)
愛情や庇護を得るため。
人から受け入れてもらって生きる居場所を得るため。
心身が傷つく事から自分を守るため。
そのために必要に応じて生まれてくるのがサブパーソナリティです。

生まれてきた経緯が違うため性格が異なり、それぞれに強い信念を持ち役割に忠実に働き続けているので、時にぶつかり合いケンカする事もあります。
ガツガツ働いて仕事で成果をあげるんだ!と思っているのに、なぜか腰が重い、モチベーションが上がらず怠けてしまう…
そんな時には、人に認められて居場所を得たい「勤勉パーソナリティ」と、自分の体を大切にして守りたい「のんびりパーソナリティ」がぶつかっているかもしれません。
サブパーソナリティ達はみんな私達の無意識下にいるのでなかなか自覚する事が出来ず、頑張ろうと思っているのに思うように動けない!という状況はこうして生まれています。

けれどもこの例えからも感じてもらえるかと思いますが、全てのサブパーソナリティ達は「私」を守り、「私」を生かすという同じ目的のために一生懸命働き続けているのです。
例えていうなら、RPGで性格の異なるキャラクター達がチームを組んで、時にぶつかり時にケンカしながらも、同じ使命を果たすために共に冒険の旅を続けているようなもの。
鬼滅で例えるならば、猪之助が暴走する事もあるし、善逸がダダをこねる事もある。そのたびに優等生の炭治郎が困った顔をしてなだめたり、叱りつけたり。
不死川玄弥みたいに困ったタイプの仲間もいる。(知らない方はごめんなさい)
ただ、それぞれが複雑な事情や生い立ちを背負い、強い想いを持ち、信念に従って戦っている。

脇役たちも含め、必死に戦っている仲間たちの中に「存在してはいけない仲間」はいません。
私達はつい、思い通りにいかない自分の嫌な部分を消したい変えたいと思ってしまいます。でも私達の内側にいるのが鬼殺隊のキャラクター達だと想像したら、無視したり消そうとするのはちょっと可哀そうじゃないですか?
鬼滅をご存じない場合は、ぜひ他の物語で想像してみてください。
あなたの内側には、どんな個性豊かな登場人物達がいますか?
 

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ジブリだったら…?とか考えるのも楽しいよね



人は元々、欠けたところのない存在


人は元々満ち足りた、欠けたところのない存在である。
この考え方は、コーチングの基本姿勢です。
ネガティブな感情も、思い通りにならない事も、不器用で好きになれない部分もあるかもしれません。それでもあなたに「欠陥」は存在しないし、あなたの内側に存在してはいけないものは何もありません。
もしあなたの内側でサブパーソナリティがダダをこねたり怒って暴れているのを感じたら、一度言い分を聞いてあげてみてください。
「何を伝えようとしているの?」「何を守ろうとしているの?」
そして、私のために一生懸命働いてくれてるんだよね、どうもありがとう。とねぎらってあげて下さい。
存在を認めてもらえて居場所をもらえたサブパーソナリティは、きちんと仲間として協調して動き出してくれるはずです。
 


おわりに


今後noteでは、読んでくれた人がちょっと心が楽になるような、ほっと一息ついて肩の力が抜けるような記事を書いていけたらいいなと思っています。
 
ちなみに一緒にサファリを歩いたマサイ族ガイドのヨッツンですが、別れ際にメールアドレスを書いた紙を渡してくれました。
メールアドレスを見て気づきましたが、彼の名前はジャクソンでした。
全然ヨッツンじゃなかった。



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