内向型人間の生存戦略
内向型人間として、30年以上生きてきた結果、1つの真理に突き当たったので、ここに書きたいと思う。
それは“内向型より外向型の方が、ビジネスにおいて、有利である”ということだ。
それは、ビジネスはコミュニケーションでできているからだ。
自分は、ありのままの自分でいい。
それはその通りだが、ビジネスの世界となるとそうはいかない。
人やお金をいかに集めてこれるか。
社会に出ると、そういうルールの中に、放り込まれてしまう。
私が外向型としてここで挙げるのは、明るいとか、声が大きいとか、活動的とか、そういうことではない。
“社交的な場や大勢の人との交流が、好きで、楽しくて、充実していくと思っている人”だ。
“人とのコミュニケーションによって、相互作用的に活力が湧いていくとする人“だ。
だから、外向型の人は、初対面の人や初めての場でも、物怖じせず、話し、交流し、場を形成することができる。
これが、内向型であると、なかなか難しい。
内向型の人間であればこのことは容易に分かると思うが、一応、内向型について定義すると、
“社交的な場や大勢の人との交流が苦手で、楽しくなく、一人(もしくは、いつメンの少人数)でいる方が充実すると思っている人”だ。
“人とのコミュニケーションより、一人(もしくは、いつメンの少人数)でいる時間こそ、活力が湧いていくとする人”だ。
そもそもの気質の問題であるから、仕方がないのだが、なぜ私がここまでビジネスにおける外向型の強さを述べるかというと、内向型人間として、外向型に打ち負かされてきたからである。
きっと、いくつもビジネスチャンスや人生のチャンスを失ってきたのだろうと思う。
でも、気質は変えられないし、むしろ、この気質が好きだったりもする。
だからこそ、内向型として生き抜いていく方法を考えてきた。
ここでは、社会で悪戦苦闘していく中で、私が築いてきた、内向型人間の生存戦略を紹介したいと思う。
内向型人間の生存戦略
1.準備を徹底する
外向型の強みとして、対面に物怖じすることがない、有事への対応力がある、ということが挙げられる。
これは、気質や性格に関わるので、内向型がこれらの要素で外向型と勝負しようとすると、圧倒的に不利な戦いとなる。
しかし、内向型は、落ち着いて、細部に注意して、物事にあたれるという特性を持っている。猛獣うごめくビジネスの世界において、内向型は内向型の特性を使って戦っていくのが、生き延びていくポイントであると思う。
そこで、内向型としては、“準備を徹底して行うこと”を武器としたい。
例えば、プレゼンや交渉で言うと、外向型は持ち前の活発さや経験、勢いで、その場の雰囲気を自分のものにすることができる。聴衆との一体感を演出することも可能だろう。
一方、対面の交渉力、対応力、また、場を支配する力も弱い内向型は、圧倒的にそういうプレゼンや交渉事では、外向型に劣る。
真っ向勝負しては、外向型に吞まれてしまうのである。
それではどうするかというと、内向型の戦い方としては、準備の段階から、交渉や場を支配することを考えるのである。
実際に、プレゼンや交渉をする際に、すべて準備段階で想定されたように進んでいけば、慌てることも、失敗することもなく、円滑に物事を進めていくことが出来る。
プレゼン資料の質や仕掛けでも、原稿でも、計画や企画、実行でも準備段階で詰めていけるところは、いくらでも見つかる。
そして、そうした上でも、もし本番での失敗があれば、その失敗を次の計画段階の時点で取り込んで、考慮し、さらに質の高い計画づくりへと昇華させていく。
そこを、一つ一つ徹底していけば、内向型でも外向型に勝てる。
むしろ、そのくらいの準備の徹底さが、内向型人間がビジネスの世界で勝っていくには必要である。
2.自分の強みは何なのか、自己理解に努める
私の強みは”聞く力“であると思う。
これは自分の強みが分からなかった頃、意識して強くしていこうとした力だ。
自分の価値観を伝えるのも大事だが、相手の価値観を相手の話から知ることも、とても大切だ。
相手の価値観を探りながら、「こういうことを言ってほしいだろうな」や「こういう情報がほしいだろうな」や「こういうことを話したいんだろうな」など、探りながら、顧客と向き合うようにしている。
文字通り話を聞くのもそうだが、相手の様子や態度や表情などを見て、比喩的に相手の内面から話を聞くこともある。
そういうことを注意深く行っていくと、相手の様子は喋っていなかったとしても、ちゃんと表面上に現れ、伝わってくるのだということが分かる。
私が外向型の人間であったならば、こういう力を伸ばそうとは、思わなかったかもしれない。
3.内向型はメンタル回復にエネルギーを使ってしまうのは、非効率。だから、小さな勝ちでもいいので、負けない戦いを。
内向型は自分の負けを、だれかに相談したり、愚痴ったり、バカ騒ぎをして忘れるということができない。
だから、負けたときのリカバリーは、自分でしなければいけない。
ただでさえ、活力を自家発電していかなければいけない内向型にとって、敗戦のダメージから回復するためにエネルギーを使うようなことは、是非、避けたい。
敗戦処理やメンタル回復にエネルギーを使って、エネルギーの自転車操業をするよりは、生産的な積み上げにエネルギーを使っていくことを考える。
そのために、内向型は、大勝ちはせずとも、小さな勝ちでも良いので、負けない戦いをしていくように心がけたい。
また、そう意識しても、負けてしまうことはあるだろう。
そのときは、負けに、傷つき、反省し、立ち上がることが重要であると思う。
負けに傷つかなくなると、負けても「まあ、いいや」と思うようになり、負けになにも思わなくなる。
そうなってしまうと、致命傷だ。
負けに傷つかない内向型は、低空飛行を続けざるを得なくなる。
だから、負けたときは、負けと真正面に向き合い、原因を探り、次は負けないようにする。
負けないためにはなにが必要か、徹底的に考え抜き、行動に転用し、負けない戦いができるようにしていきたい。
4.共同体感覚を知る
教育業界に身を置いたことがきっかけで、アドラー心理学を勉強していくことになる。
アドラー心理学は、子供と接することにおいて、非常に多くの示唆を含んでいるおり、これは仕事をしていくあたって非常に役に立った。
そして、学んでいくうちに、いろいろな気づきや発見があった。
特に、アドラー心理学において、共同体感覚という考えに出会ったが、これを知ることは、人生の根幹を揺るがすものだった。
この考えをもっと早く持っておけば、人生の幅はもっと広がっていたのではないか、そのように思わせてくれる考えである。
共同体感覚とは、岸見一郎著の「アドラー心理学入門」から引用すると、
“自分のことだけでなく、他者のことも考えられる、他者は私を支え、私も他者とのつながりの中で他者に貢献できていると感じられる感覚”
岸見一郎著「アドラー心理学入門」
である。
以前の私は、とかく自分の世界だけに入り込みがちだった。
しかし、自分の中だけでなく、外の世界にも目を向ける、これはみんなにとってどういうことなのか、これは他の人にとってはどういう意味をなしているのか、など、他の人のことを考えられることが、内向型の人間には特に大切であることに気づくことが出来たのだ。
内向型人間は、とかく一人で物事を完結しがちであるが、だからこそ、この共同体感覚というものを持っておきたい。
このように、なにかを深く学んでいくことは、内向型人間にとって、武器を手にするために、非常に大切なことだ。
5.徹底的に自問自答する
内向型人間は、内向型のようになりふり構わず他人に飛び込んでいくことがなかなかできない。外向型の、積極的に話しかけ、会話が盛り上がっていく様子を見ると、その気質に舌を巻くほどである。
しかし、内向型は、他人との会話を盛り上げることは不得意だが、自分との対話を活発的に行うことは得意であると思う。
したがって、この自己対話の質を高めていくことが、内向型が生きていくためには大切だ。
おすすめの方法としては、読書である。
読書は、本を読むことを通じて、筆者と対話ができ、引いては、自己との対話ができる。
この効用は、他のものでは代用できない。
一人では限界のある自問自答も、本を活用することで、より深く行うことができるのだ。
読書を通して、過去を振り返り、現在を知り、未来について考える。
自分との対話を繰り返し、骨太なものにしていく。
自問自答の質を高めていき、人生の質を高めていくようにしたい。
以上、内向的人間の生存戦略を書いてきたが、自分もまだまだできているとは言い難い。
その分、内向型人間としての個の力を押し広げていき、社会に貢献できる存在になれるよう、研鑽していきたいと思う。