中編小説『最初の人』⑨
機を見たかのように、再び夢に桜ちゃんが現れた。今度は幼いままで、俺も同じように小学生時代にタイムスリップしているようだった。彼女は校門に立っていた。俺は、距離のあるところから彼女を見ている。距離があるはずなのに、彼女の表情が手にとるように分かった。その顔はどこか悲しそうだった。俺は走って彼女の元に駆け寄ろうとするが、上手く走れなかった。何度も走ろうと試みるが、足が思うように動かず、ついにはグラウンドの上に転んでしまう。彼女は俺に気づいてくれない。依然として、悲しそうな表情を