てぃくる 438 ばち
「どうした? すごく悩んでいるようだが」
「うん。俺はどっちだろうなあと思って」
「どっち……って?」
「ばちがあたる、か。ばちをあてる、か」
「は?」
「俺がばちなら、ぶつかったやつにばちをあてる」
「おう」
「でも、俺がばちでなければ、ぶつかった俺がばちにあたる」
「まあ、あんまり考え込むな。ばちがどうのこうのという以前に」
「うむ」
「おまえは木の実だ。ぶつかることも、ぶつかられることもないよ」
ばち。
実は表記が複数あります。
弦をはじいたり太鼓を叩いたりする撥。
天罰を示唆する罰。
蜂や鉢も、前に形容語がつくと濁って『ばち』になりますね。
駄温鉢、スズメバチ……のように。
文脈の中では意識せずに区別していますが、ある部分だけを取り出すと彼のように悩むことになります。
まあ、あまり考え込まないで、ばちばちばっちこーいと行きますか。
(2018-07-15)