てぃくる 239 封じる
恋心。鋼鉄もコンクリートも、それを封じることは出来ない。
妄執。鋼鉄もコンクリートも、それを封じることは出来ない。
野心。鋼鉄もコンクリートも、それを封じることは出来ない。
嫉妬。鋼鉄もコンクリートも、それを封じることは出来ない。
悲嘆。鋼鉄もコンクリートも、それを封じることは出来ない。
その封じられないものを、我々は封じている。
平凡と日常というたくさんの懐紙の間に挟んで。
それは、鼻をかむ時にふと逃げ出すかもしれない。
しかし、結局のところ用済みになった懐紙とともに捨てられる。
そして。
アスファルトを抜け出した雑草を見て。
あなたはふと首を傾げるのだ。
封じていた心は、いつの間に逃れたのだろうと。
封じていた心は、一体何だったのだろうかと。
アスファルトは液体さ 夏の草が嗤う
(2016-07-14)