小川洋子『シュガータイム』読了
さすがの表現力。表現力。表現力。表現力のパレードで、小川洋子さんの本気度がわかる作品。しかし、表現の創造力がきれいで、繊細なので、どうしてもそちらのほうに目がいってしまい、作品自体にのめり込めなかった。そこが難点。新しい表現方法をこれだけ絞り出せる才能は素晴らしいが、ストーリーとのバランスが乱れてしまった。
純文学では結末ですべて明かされるわけではない。だからこそ読み手の感性も育つのだ。答のない問いに自分なりの答(仮説)を出せること(他人や解説書に頼ってはダメ)が読書の醍醐味だ。人に頼るな、自分に頼れ。コスパが悪いと若者は言うけれど、コスパはすべてをお金に換算することで、人間力を貶める悪魔の言葉である。人間力を成長させるのに近道はない。
かおる、翔平、真由子の関係は悲しくもあり、美しくもある。しかし、青春の1ページとするには、あまりにも淡い物語だ。