『さよなら、ベイビー』里美蘭 / 人生が子ども自身のものならば、私は何を遺すだろう。
物語は、読むその時々に心に響く場所が違うから不思議なものだ。
七年ぶりに開いた本著は、人間関係が隠されたまま複雑に絡み合うミステリー。最後まで「誰が誰なの!」と脳内大混乱のまま読み終えて、奇妙な気分になった。
七年前、この小説を読みながらほたほたと泣いた夏は、私にとってはもう遠い過去のものになったのだ、と。
親なんていつか死んでしまうんだ。勝手に、何の断りもなく。
物語は、少年が逃げ出すシーンから始まる。
死の淵にある母親から。自分自身の命から。けれど彼は自分の命からは逃