第4話(2/4) 青鬼の思い出
五辻総監に指定された時間の5分前に船頭と瑞樹は田戸台の総監官舎の前に立っていた。
船頭は迷わずインターフォンを押すと女性の声で「どうぞ、お入りください」と応答があり、電子錠の開く音が聞こえた。
玄関から五辻総監の奥さんと思われる女性が出てきて、「船頭さん、こんばんは~ご無沙汰しております。あら、かわいらしい女の子まで!どうぞおあがりください」といい、船頭さんの後について官舎に入っていく。
案内された部屋に入ると五辻総監が和服でくつろいで座っていた。
「お~船頭さん、お疲れさん。さっきは途中で話が終わってしまって悪かったね。山口さんもようこそ。まあまあ、適当に座ってゆっくりしていってよ」
瑞樹はハテナがいっぱいだった。
『船頭さんって五辻総監とどういう関係なの?全く意味がわからないわ???』
「山口さんには言ってなかったけど、五辻さんと僕は付き合いが長いんだよ。もう20年くらいにはなるのかな。五辻さんが若かった時に市ヶ谷の広報室で勤務していた時からの付き合いだからね。僕は防衛省の記者クラブにいたんだよね~」と船頭記者が懐かしそうに話す。
瑞樹はびっくりして声が出なかった。
『見た目も人生も対称的な二人がそんなに仲が良かっただなんて・・・』
「山口さんは今日の海上自衛隊の見学会であらかた概要は理解できたかな?本当だったら最後の懇談のときにお話したかったんだけど、急な対応が入ってしまったので船頭さんにお願いしてわざわざ来てもらったんだよ。」と五辻総監が瑞樹に語りかける。
瑞樹は、
「こちらこそ海上自衛隊のことを何も知らずに初対面で失礼な質問をしてしまって記者失格だと思っています。申し訳ございませんでした。今日はお招きいただきありがとうございます。」と恥ずかしさと緊張の混ざった返答をした。
五辻総監は笑いながら、
「いやいや、山口さんは気にする必要なんかないですよ。今まで青鬼って何ですかっていう質問を記者さんからされたことがなかったからつい面白くてね。久しぶりに昔を思い出しましたよ。あの時は私もまだ27歳の若造で船頭さんと知り合う前だったから船頭さんも知らないだろうし、せっかくの機会だから思い出話を話そうと思ってね。」とビールをちびちびやりながら話す。瑞樹はその姿に普段と違う五辻総監の素顔を見たような気がした。
「江田島の鬼については私なりに勉強してきたつもりです。五辻総監が青鬼だった時代のお話を聞くことはとても興味があります。海上自衛隊を担う幹部を育成する学校にも将来的には取材したいと考えています」と瑞樹は目を輝かせた。
「山口さん、面白いね。船頭さんとは対称的だよ、フフフ。船頭さんなんか防衛省の記者クラブ時代なんかいつもお酒のにおいを漂わせていてひどいもんだったよ。勝手に事務所に入っていくから1年経たずに、防衛省を出入り禁止になったんですよね。でも、不思議に記事はしっかりしていた。あれは私にはまねできない。」と船頭記者に向かって五辻総監が笑いかけた。
船頭記者は黙ってお酒を飲み、すでに顔は真っ赤だ。たぶん、明日は使い物にならないだろうと瑞樹はちょっとメンドクサイ気持ちになった。
第4話(3/4)につづく…
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