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はるのそら

 うすぐらい へやで ひとり
 ほんのすこし あけた
 しょうじの すきまから
 あおい そらと
 ながれる くもを みあげる

 こどものころ みあげたそらは
 ひろびろと していて
 あしもとの アスファルトの すきまには
 きいろい たんぽぽが さいていた

 しろい わたげが
 あおぞらに ふわりと とんで
 はるの ひかりが ぴかぴかしていて
 みどりの はっぱも げんきいっぱいで

 ちいさな わたしも うれしくなって
 ひとりで こっそり スキップをしたり
 ちいさな こえで
 うたったりしながら あるいた

 もうすこし おおきくなってからは
 みどりが こんもり しげる
 ちいさな やまの うえの
 がっこうの おくじょうで
 
 まちのうえに ひろがる あおぞらと
 ゆったり ながれる おおたがわ
 せとうちに うかぶ
 にのしまを ながめながら
 まいにち ひがくれるまで そこにいた
 
 ともだちと あつまって
 おおきな こえを だしたり
 うたを うたったり

 とおい むかし
 とても とおい くにで うまれた
 その うた は
 いまは もう つかわれて いない
 ふるい ことばを
 みずいろの そらと うみに
 ひびかせて とけていく
 
 きっと いろんな じだいの
 いろんな くにの
 いろんな くらしの ひとが
 それぞれに そらを みあげながら
 うたってきた うた

 いまは
 おっとと ねこと ちいさなへやで
 ちいさなまどから ちいさなそらを
 みあげている

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