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#233 旅ログ 越後酒編 〜冒険はやってみなくちゃわからない〜
先日の香港から間が空いてしまった。
香港ではトラムに乗ってピーク (The Peak)と呼ばれる高台に登ってハイキングコースを息子とのんびり歩いた。二人でどれだけ話しても話が尽きることがなかった。
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書き出せばとめどなく想いが溢れそうだが、私自身ではなく息子のプライバシーに関わることになるのでまだここには書けない。いつか自分の心の整理がつくことを祈っている…
日本に着いてからの旅日記を書いてはいるが、その日訪ねた場所、出費や食べたものなどの記録であり、そのままここに貼っても、別に面白くもなんともない (・_・;)
なかなか冒険だったかもと思えることといえば‥‥ 今回私は、次男を通して出会い、zoomでしか話したことのなかった女性と日本に着くなり三泊四日の旅をした。
「それって大丈夫なの!?」
彼女は周りの皆んなからそう言われたそうだ。
確かによく知らない相手と一緒に旅行するなんて、気が合わなかったら最悪な結末もありそうな話だ。
ただ、そんな当然といえば当然な周囲の不安をよそに、私たちはとても満ち足りた時間を過ごし、こんな短期間で想いを分かち合える友になれたことを一緒に喜び合った。そして涙で抱き合って別れを惜しんだ。
これがひとつの冒険。
そこにつきものの『リスク』を恐れたとき、人は安全を選んだ自分に納得するのだ。冒険できたかもしれない特権を放棄して‥‥
(時間があったら彼女と回った奈良、京都のハイライトも書いてみたいと思う)
一人になってからの次なる冒険は、越後須原という(聞いたこともなかった)辺鄙といえば辺鄙な町に行ったこと。
米どころ新潟の酒だけを集めた『ぽんしゅ館』という、私にとって夢の国のような場所がある。
すべて新潟県内だけで作られた百種類以上のお酒の中から好きなものを選んで利き酒ができる、ぽんしゅ館の唎酒番所は新潟、長岡、越後湯沢、三箇所それぞれの駅内に併設されている。
一度娘と日本旅行をしたときに訪れ、ふたりでGiggle (笑い) が止まらなかった、いつかまた行きたいと思っていた場所だった。
そこで娘も私も一番好きなお酒が一致した。それがイットキー(It's the key) というワインみたいなお酒。もっと言うならそれはヨーグルトみたいなフレーバーもあった。
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この前衛的なお酒を作った酒造所に興味があった。調べるとそれは玉川酒造といい、酒蔵のあるのが越後須原という町だという。
先に書いた京都行きが先に決まったため、新潟は方向違いにもほどがあると思っていた。けれども私は冒険と呼んで行動する自分が好きなのだ。やってみたいことのためには可能性を諦めることはしたくない‥‥
一日京都にいた私が夜寝ている間に長岡についてしまう方法‥‥ ぶっちゃけ夜行バスに乗ったなら、一晩開けて長岡から始められるのだ。
とはいえ、通常私の年代の人はそんなことはしない。
だが私は喜んでやってしまう。
その酒蔵でどんなお酒が作られているのか確かめに行きたい冒険心を、ただ最優先するがために‥‥
早朝の長岡の後も、一時間に一本というようなローカル鉄道とバスを乗り継いで、たどり着いたところにあったのはまだ巨大な雪の山の残る酒蔵。この雪山がゆっくりと溶けながらも9月までは残るのだそうだ。
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下に掘った貯蔵庫の中で眠っていたお酒、それこそが今回私が恋に落ちたお方、雪中貯蔵 大吟醸原酒『越後ゆきくら』である。
十種類以上のお酒の飲み比べをしたなかで、『ゆきくら』は、商品説明を完全に「そのとおり!」と納得させる力を持っていた。
山々に挟まれ、夏は県下最高気温を観測し、冬は3メートルもの純白の雪が降り積もる魚沼市。魚沼の自然豊かな風土を活かし、創業から培われた350年の全ての技術と情熱を注ぎ込んで造られた最高峰大吟醸原酒が越後ゆきくらです。
地元魚沼市旧守門村で栽培された魚沼産山田錦を35%まで精米して低温発酵にて酒を醸します。ゆっくりと醸されたお酒は丁寧に搾られた後に瓶詰めされ、その後雪中貯蔵庫に入ります。雪中貯蔵庫内は年間を通して2度と安定しており、光や電気振動等も一切ありません。そのような環境下でお酒は冬眠状態となり、新酒の新鮮でさわやかな香りのまま柔らかく熟成し、芳醇馥郁とした酒の風味を最大限まで高めます。
日本酒鑑評会で数々の受賞歴を誇る蔵人渾身の一本をどうぞお楽しみくださいませ。
ちなみにワインボトル一本分のイットキーの値段が1,800円なら、このゆきくらは6,000円だ。我が家ではシングルモルトのウィスキーだってこんな値段のものは買わないぞ💦
そんな、連れて帰りたいけれどお値段が‥‥という私のような人のために、ドレスビンと称した、まるで香水か何かのような一合瓶があり、割高と知りつつもこちらを買った。(どうしてももう一度飲みたかったし、夫にも飲ませたかった)
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酒蔵へ行った翌日は、越後湯沢のぽんしゅ館を経由して帰ろうというのが私の当初の計画だった。ところが、もっといろんなお酒にトライするのかと考えたときに、昨日のゆきくら以上に飲みたいお酒が思いつかないのだ。イギリスでの私の日本酒への思慕を『ゆきくら』というお酒が満たしてくれた。気持ちが満たされたら里心がついてきたのか、せっかく越後にいるにもかかわらず、寄り道せずに帰ることにした。ルートを変えて、もっと早く実家に着ける予定で宿をチェックアウトした。
一泊二食の宿泊費は8,800円。夕食時の定番『玉風味』の冷酒と共に支払い額は9,480円。素晴らしいお宿だったと思う。
魚沼産のお米は最高だし、山菜づくしのお料理は衝撃的に美味しく、これほどまでお腹がはち切れるほどまで食べたことは久しくなかった、と気づいた。
私にとってこの宿泊費が、トイレと洗面所が部屋にないのとお布団を自分で敷くこととの引き換えであるなら、願ったり叶ったりのお宿だと思った。
何よりも若女将さんが優しくて本当に素敵なのだ。夜行バス明けはやっぱり体に堪えた。それでチェックインを3時間半も早めて下さり、セルフでなんでも揃っているのに、お茶を淹れて下さった。
出来立ての手作りの桜餅とともに…
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次回は是非、夫と車で行きたいと思う。酒蔵ゆきくら館での日本酒の試飲と民宿小西屋宿泊のセットには、それほどに魅了されてしまったのだ。
さて、
ローカルバスから見える枝垂れ桜の並木道が綺麗なこと
酒蔵へは、水筒を持っていけば、お酒作りと同じまろやかな雪解け水が汲めること
お昼の腹ごしらえは小西屋さんのお隣のラーメン屋さんが美味しいこと
夕飯時に聞こえる蛙(だと思う)の合唱がなんだかすごく良かったこと
越後須原駅前の A Coop で、玉川酒造の酒粕が買えること
どれもこれも冒険に出なければ知り得なかったこと‥‥
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