#191 椅子のケイニングを学びました
ここのところ家具職人化してきたコノエミズです。
とにかくくたびれて愛されなくなっていたような家具に新しい命を吹き込めるのが嬉しいのです。
先月の話になりますが、椅子の座面を編むワークショップに参加したので、報告記事のようなもの、いってみます。
この企画は、イギリスのあるチャリティーによって主催されました。学びたい人に優しいこのチャリティーでは、個人の収入が一定値に達していなければ、受講料も無料にしてくれます。
収入の証明ならば給料明細を見せればいいでしょうが、公的援助を受けていない人の無収入の証明ってどうするんだ?と悩みました‥‥
ところが、結局、証明の提示を求められることもなく、あっさりと手続きも済みました。なんというか、懐深いような、おおざっぱなような‥‥
こうして4週に渡る『Learn Seat Caning』(椅子のケイニングを学ぼう)というコースが始まりました。
ワークショップ一週目
この日はまず自分が担当する椅子のもともとのケイニングを切って取り除くところから学びました。
ボロボロに壊れていたわけでもないのですが、ほんの一部がちぎれていても、結局全部を修さないといけない感じです。
そのうち慣れて仕組みがわかってくれば、駄目になった部分だけ最小限に修理することもできるようになるのかもしれません‥‥
さて、全て取り除くことができたら、縦軸の真ん中から始めていきます。
穴に挿してケーンを留めているのはゴルフティーです。
初めに真ん中からどんどん移動していって縦軸を張り終わったら、次は横軸もやはり真ん中から始めて全部張ります。単純に縦軸の上に通すだけです。
次は横軸の上から二重目の縦軸を張り渡します。この際は端から始めました。
いつ編み込みが始まるのかな?と思いつつ割と単純な作業を続けているところです。
ちなみにワークショップは10時に始まり、午後4時までです。お弁当持参で和気あいあいとおしゃべりしながら、一日目はここまでで時間がきました。
ワークショップ二週目
この日は先週の続きで二重目の縦軸を終えました。
そして、二重目の横軸。ここから編み込みが始まります。
拡大して見ていただければ、縦横二重で構成する四角が『上下上下』で構成されているのが分かると思います。
やっと『編んでいる』感じが出てきて、面白いといえば面白くなってきましたが、スピード感も落ちてきます。
そして斜め軸へ。
これが、二日目が終わった時点の進展でした。
なかなかの根気作業ですね。
こうして写真で見ると、線がヨレ~っとしていますが、進んでいくうちに曲がっていても気にならなくなると言われ『そんなもんか‥‥』と気楽にしています。
ワークショップ三週目
作業も後半戦に入ってきました。
とはいえ、斜めは一本ずつが長いということもあり、意外と時間がかかります。
ちょうど中ダレしているような三日目。
作業に集中していると、肩が凝ります。
私たちの講師のエミリー (仮名) は自然の中でボディワークもしたりする自然児。エミリーの「さあみんな、立ち上がって!Boogie Time~!」の一声で、ノリの良い音楽に合わせてみんなが即興のダンスを始めて肩や腕の張り、足腰の緊張を緩めるのです。
もうおばあちゃんも真面目なおじさんも、みんな思い思いに体を動かして笑顔になれる瞬間。
これがあるのとないのとでは大違いだと思える、大切な『緩める』時間に拍手~。
肝心のケイニング、果たして翌週だけで完成するのか‥‥そんな思いがちらりと頭をよぎります。
ワークショップ最終日
もう後がないので、みんな「絶対完成させる」という覚悟で臨んだ四日目。
残りの斜め軸をやり終えたところです。
拡大していただくと、穴がふさがっているものと空いたままのものがあるのが分かると思います。ざっくり交互になっています。
これは丸い竹串の太いようなものを切ってトンカチで打ち付けて穴をふさぐのですが、全部グルリとふさいで終わるのがひとつの仕上げ方法です。
それで終わっても良かったのですが、今回は時間もあったのでさらに一テクニックを教わることに‥‥
このように太いケーンを被せて穴が見えないようにすると、額で囲んだ絵のようにスッキリと見えます。
あらかじめ残しておいた穴は細いケーンを下から通して留めるためのものでした。
ラッピングというのは、周りを囲むのでWrappingなのだとずーっと思ってた私。
訂正いたします、Lappingでございました。多分、『一周させる』という意味なのだと思います。
(恥ずかしい‥‥24年も英語圏で生活していても、L と R の聞き取り、使い分けを間違えるんです、悲しき日本人)
じゃじゃーん!
嬉しいです。
ただひとつ、いつのまにか私、やらかしていました。黙っていればわからなかったかもしれないのですが、エミリーが「あれ?」と言って指さしたのは向かって左の前の角。
ラッピングする前は左右ともに Fish Eye と呼ばれる形があった (3枚先の写真) のに、作業中に私、差し込む穴を勝手に変えていたようです(笑)
完成形はなぜか、右角は二本入っているのに左角は一本に変わっていました。
エミリーと顔を見合わせました。
ちょっと吹き出しそうなのを堪えて「It's Wabi-sabi (詫び寂び) Style!」と言ってくれました。ナイスフォロー。
詫び寂びスタイルは『不完全の美』が大切だ、と勝手に決めました。もう最強です。
これらのケイニング椅子たちは、もちろん椅子を持参したならば材料費 (ケーン代) を支払って自分で持って帰れます。
でも私はもともとの椅子を持っていなかったのと、自分の家に欲しかったわけではなかったので、手元には残りませんでした。
私が欲しかったのはこの手法で復元しなければならない椅子が現れたら、対処できる能力でした。
さて、この技術、使わなければ忘れます。活かすも殺すも私次第‥‥ということで、早速、次のプロジェクト用の椅子の準備です。
SNSの掲示板のようなところで見つけたのは、自分で仕上げたかったけど時間がなくて出来なかったという古い椅子。
もちろんこのままでは椅子として機能していないのでめちゃくちゃ安く手に入りました。
じゃーん。これです。背もたれの高さが無駄にゴージャスではありませんか。
この二作目が終わってから投稿するつもりでしたが、取り掛かる前に宣言して、自分のやる気に繋げたいと思います。
この寒いイギリスで、暖炉や薪ストーブの前でできる家具の修理となると、これがちょうどよいと思うのです。
面白いもの見つけちゃったなぁ‥‥と喜ぶコノエミズなのでした。