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#226 家具の再生 〜綺麗にしすぎず古さを残す〜
今日は敢えて足さない、変えないことを大切にした家具の魅力をお伝えしたいです。
一つ目は小さな子ども用の椅子。
かぶった埃といい、何ともいい感じで古ぼけてます。
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もともと私がボランティアで働くReSTOREにあったものです。脚同士を繋げて支える水平の棒が3本なくなっていました。
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ところが、ツールも素材も大概その場で調達できる万能な作業所にも、ちょうどいい棒がない!
『少ししか要らないのに新しい丸材を一本買うのもなぁ‥‥』
そんな躊躇があって頓挫中の椅子だったことで、安く譲ってもらえることができました。ちょうど我が家に同じ円周の棒があるのを見つけたのです。
詳細は省略しますがこれを修理して、ウッドステインで新しく付け足した木の色を本体の色に近づけていきます。
アフター写真をアップで撮っていませんでした。
お店に置いた写真が一枚だけ残っていたのがこれです。
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ほかの椅子と比べても、その小ささがわかるというもの。
クリスマス前に催したポップアップショップでも多くの方が手に取って「Lovely!」と言ってくださいました。
この椅子が魅力的なのはそのAuthenticity (オーセンティックさ)、つまり偽りのなさだと思います。
木製のものは、サンダーで擦って真っ新にすることもできます。でもそのUSED感にこそ愛着心が湧くのでしょう。
特にイギリス人は新築のものよりも古い家の方を好む傾向があります。例えば我が家は築110年ですが、この国では家が古いことで資産価値が下がることもありません。
例えばビンテージのこども用机などは、子どもが付けた傷や落書きをわざわざ消さずに残した方が高く売れると聞きました。
そして家のピリオド感 (例えばビクトリア調)に合うとなれば選ぶ家具も自ずと古いものになるのだと思います。
寒くて暗いイギリスの冬は長いです。残念ながら天気に左右されてしまう建物に保管された家具は、カビが生えたりして寄贈いただいた時よりも状態が悪化します。人の手が掛けられたものとそうでないものの差が顕著に表れるのがそこなのです。
ReSTOREの作業所で最近手がけた家具がそうでした。
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現代のパイン材(松)の家具というと一様にオレンジ色っぽい照りの仕上げが施されたものばかりになってきました。
そんな中にあって、古いパインでしっかりと作られ、色なし艶なしの家具はなかなかに希少です。スペースがあれば自分が欲しいくらい‥‥
くまなく綺麗に拭き取り、雨の晴れ間に外に出してひたすらサンディングします。
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こんなになっても「汚い」と捨ててしまったなら、二度とその家具は戻りません。側面はサンディングの結果、このくらいまで綺麗になりましたが、背面にも問題が‥‥
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背面の腐りかけた木は張り替える必要かありました。
下2/3を中古の板に貼り換えました。たまにこういう金づち作業を思い切りできるのも楽しいです。毎日だと嫌だけれど、作業にバリエーションがあるのでこの仕事が大好きなんだと思うのです。
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写真を撮ってませんが、貼り換えた板にアンティークパインというステインを塗ったら、新旧の色の差もほぼなくなりました。
引き出し部分をまんべんなくサンディングするために真鍮の取っ手を全て外します。取っ手はサンドペーパーで擦ると元の艶を取り戻しました。
サンディングが終わり、ワックスをかけた箪笥に取っ手や鍵穴を取り付け引き出しを戻したら、完成です。
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いかがでしょう?
最初の写真とそんなに変わらないじゃないか、と思われる方もあるかと思います。
個人的には、綺麗になったけれどばっちり使い込んだ感じが残っているのがいいのだと思っています。
ベッドルームにたんすとして置くのもいいのかもしれませんが、ファームハウスのキッチンにあっても良い気がします。
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あるいは、この作業台部分に丸い穴を開けて、陶器のボウルをはめ込み、洗面台として配管するというのも、憧れだったりします。
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オリジナルの洗面台にぴったり合いそうな家具をいつも何となく探していたのですが、このたんすはちょっと位置が高いかもですね。
例えば古いシンガーミシン台だとこんな風にもできそうです。家に一台ありますが、ミシンとしても動いているので悩ましいところです。
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‥‥話が横道に逸れました。
最後に、私が去年手掛けた家具のうち、修理以外には余計なものを足さず古さを隠さず、本来の木の美しさに近づけることに留めた家具を見てくださいね。(出来上がり写真が残っていたものだけになります)
どれもビフォー写真が残っていないのですが、初めはボロボロでした~。
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本日はビフォーアフターの写真が面白くないと言われそうな、
リメイクとかアップサイクルとは呼ばないようなやつでした。
垢を落とし過ぎても加工し過ぎても魅力がなくなることってありますもんね。
それにしても、日本人が新しもの好きなのか、イギリス人が古いもの好き過ぎるのか‥‥? (๑˃∀˂๑)
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