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#172 ライティングビューローのお色直しを‥‥
私のお手伝いしているチャリティーReSTOREでのお話。
またも、古ぼけた代物を奥の奥のほうから引っ張り出してきました。
どれどれ‥‥ こんなやつ。
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蜘蛛の巣や、ごく表面に青カビもちょっと生えかかっていて、まずは全体のお掃除から。Soda crystals という市販の重曹 (正確にはちょっとアルカリ度が強いもの) を入れたお湯を使い何度も何度も濡れ拭きをします。
デスク部分を開くとこんな感じ。
トップ部分に温度変化したような変色や、右端にも何かの汚れ跡があります。
全体に塗ってある濃いめのニスを除いてしまいたいものです。
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最近の傾向としては、木目が見えて、ニスでテカテカに仕上げていないもののほうが好まれます。この机ではなんだか楽しく作業する気がしないのです。
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まず全体にサンドペーパーをかけます。ニスがしっかり塗ってあるデスク部分とトップ部分はかなり丁寧に。これでほぼ一日かかったように思います。ペイントで色付けする部分はそれほど擦る必要はないのです。表面を軽く撫でておけばペイントが付着しやすくなります。
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木の色が濃い目なのと、選んだ色が薄めなので、まずはPrimer と呼ばれるベースコートを先に塗り、それからペイントです。
その下準備にとっても大事なのがマスキングテープ貼りです。
トップ部分の平らな部分だけ色を塗りたい。けれど画像を遡っていただくとわかるんですが、そこは3㎜ほど高くなっているのです。その側面3㎜も一緒に塗りたいわけです、正確に!
そこでマスキングテープ貼りがとても重要になってきます。
そこへ、ここぞとばかりにマネージャーが出してくれたのがこれ。
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これがホントにすごかった。今まで使ってきたマスキングテープはなんだったのか‥‥と思えるほどにピターっと貼りつき、剥がした時の線が寸分もぼやけたりブレたりしないのです。
オイオイ今までこんなの聞いてなかったぞ‥‥そう言いたかったけど、なにしろこのテープはお高いんだと知って、マネージャーが鍵付きロッカーに保管する意味がわかりました。
塗った後がこんな感じ。
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ほぼ完成が見えてきたところ。引き出しの取っ手の金具が片方壊れていたので、こっちのデザインに替えました。前のよりも断然いい感じ。
このワークショップには数えきれないほどの古い家具が修理されたり解体されたりしているので、古いパーツの宝庫。ちょうど合うものが欲しい数だけ揃うとすごい達成感があるのです。
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引き出し部の左右の外側に普段は隠れているデスクを支える木があります。数名の男性たちの手を借りても、左側のメカニズムがどうしても修理不能と判明。写真にはありませんが、手で引き出せるようつまみ部分が必要です。この時も、右側にも同じものを付けて左右対称にした方が自然に見えます。そうしてようやく小さな真鍮の取っ手を2つ探し当てた時の嬉しさよ。(お見せできず残念!)
実はその棚の部分の上に何枚かの手紙や領収書が引っかかっていました。1920年代、ほぼ百年前のものでした。オフィスの賃貸料のようなものが£1 (1ポンド) と書かれ、シリングなんていう私の知らない貨幣単位なんかも‥‥
このビューローの歴史として、それを完成後の引き出しの中にPVAで貼ってみました。使う人は引き出しの底に普通は紙などを敷くものなので、所有者だけが知っている秘密、ちょっとワクワクします。(ああ~、写真を撮っておけばよかった!筆跡もカリグラフィーっぽくて素敵だったんです)
これはオリジナルのものかどうかは怪しいのですが、もともと引き出しに敷いてあった紙がアンティーク感があって、いかにも英国風でちょっと気になったので、処分する前に写真だけ撮っておきました。
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お店に置かれました。
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週末に来て寸法を測って行かれた老夫婦が、翌週私が作業している時に買いに来てくださいました。彼らの車まで運ぶのを手伝う私の顔は緩みっぱなし。
この秋、40年ぶりの高インフレ率が、国民全体に大きな影を落としているイギリスです。最近は売り上げもガタ落ちだったので、私の手がけたものがお嫁に行って、とても嬉しいことでした。
最近、このボランティア作業を通して覚えた知識で家にあるペイントを使ってこんなこともしてみました。(以下、Before and after)
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これも無事お嫁に行きました。
お天気のすぐれないイギリスですが、晴れ間晴れ間に庭に出てペイントするというのも、この季節の良い過ごし方なのかもしれません。
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