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【ドラマ感想】朝ドラ 虎に翼       いつも心に寅ちゃん&よねさんを

虎に翼は今を生きる自分たちの物語

 朝ドラにここまでハマったのは結構久しぶりの事だったかも。理屈っぽい主人公で法律を学ぶ女性というのは、大学で法学部にいった自分を投影しやすかったのだろう。
 結婚する?しない?と進学という問題から旧民法下での女性の無能力の問題はつかみとしては申し分なく、寅ちゃんに引きずり込まれてしまった。現代と言っても、雇用機会均等法のすぐの年代の自分は進学するなら短大でいいじゃないかとか言われた時代に育った。4年制の大学でも教職が当然という感じで、あまり法学部に行く友人もいなかった。まぁ法学部に行くことが地獄の入り口ではなくなっていたが、キャリア採用をねらうことは『地獄の入り口』に立つことであったか。
 だから寅ちゃんと穂高先生との確執めいたものも共感できたのかもしれない。後に続く後輩のためじゃなくて、今ここにいる自分は何なんだ、という怒りは先駆者にはつきものなのだろう。自分はそれほど頑張った存在ではなかったし、刀折れ矢尽きるほどのことも起きなかったけれど。

 特筆すべきなのは、ドラマで取り上げられた裁判などで取り上げられた問題が、2024年でも動いていることだった。主要なテーマになると言われていた原爆裁判は、被爆者への補償問題からの運動を後押しした。被爆者補償の問題は今でも、規定される被爆者の範囲が狭く対象を広げるべきだという裁判がされている。それでも、被爆者が原爆の実態を訴え続けたことで、運動は成果をあげている。ロシアがウクライナへの侵略で限定核を使うのではとプレッシャーをかけても、『使ってはいけないもの』と認識されるようになったのは被爆者が訴え続けたからだった。この『使ってはいけないもの』という認識を植え付けたことが、ノーベル平和賞の受賞という形になった。ただ被爆者はもう高齢化しているので、聞いたことを伝えていく義務を自分たちはになっていく必要がある、ということを心に刻んでおかないといけない。

 何よりも憲法24条をなんども使い、知らしめたことが一番大きかったかもしれない。すべて国民は~から始まる平等とはを定義した条文は、社会的弱者にとって武器になるということだった。ドラマの中で何度も語られた法律とはなんだという答えの一つに生活する上で身を守る武器でもあるというのがあった。平等というこの武器を使った一つの成果が、尊属殺人罪の重罰規定が憲法に違反するという判決だった。この裁判は、平等を語るうえでとても有名な裁判で、自分ももちろん勉強したこともあり知っていた。わかっていたこととはいえ、判決の場面はとても心が痛くなった。
 そしてこれを書いている今、同性愛者の婚姻を認めない現民法は憲法違反であるという高裁の判断がでた。婚姻の成果を同性愛者が得られないのは、規定する民法の不備にありそれが憲法24条にある平等に反するものということだった。ドラマの中でも同性愛者が出て来て、将来は自分たちのような関係も社会的に認められるようになって欲しいで、終わっていた。続きはもう、立法つまり国会が動くべき状態にあるはずだ。
 他に国会が動くだけの状態になっている問題の一つが、選択制夫婦別姓問題もある。史実と違うと言われた寅ちゃんと星航一さんの再婚が、事実婚であったのも婚姻と同姓が義務になっていることを改めて認識させてくれた。それは衆議院選挙の争点にもなり、今後の動向を注目していかないといけないことになっている。それにしても、選択制なのにその選択さえさせてもらえない現状を変えることを反対する人って、他人の人生にそんなにかかわりたいということなのだろうか。

 ドラマとしては、家庭裁判所に関する事件がほかの事件で埋もれてしまった感じがして残念だったりしたけれど、最初の司法試験に挑んだ女性たちの物語としてとても面白かった。まっすぐ進んだ寅ちゃんやよねさんだけでなく、涼子さまのけりのつけ方がまた興味深かった。
 そう、いつかモデルになったお店に、あんみつとお団子を食べに行きたい。

明治大学博物館での「虎に翼」展から

明律大学のステンドグラス
法服

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瑞野明青
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