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【#2】ホログラム/短編小説


君を見ると僕の世界に星が降る——。

 僕は自分の世界に星を降らしてくれる人に憧れていた。だから僕も誰かの世界に星を降らせられる人になりたいと思って、誰かの視界でキラキラ輝きたいと思って、『ホログラムのメイク』をしている。

 ホログラムのメイクと云うのは、涙袋と瞼の真ん中にホログラムのアイシャドゥのグリッターを乗せるメイクのことで、僕は強烈なゴールドを中心にグリーン・ブルーと六角形の星のかけらが多彩に輝くラメを散らしている。

 カラーコンタクトが余り好きじゃない僕は、ワンデーの普通のコンタクトレンズを使っている。今時の十代二十代三十代はカラーコンタクトレンズを日常使いしているのが当たり前らしく、カラコンをしていない僕は以前からアイメイクをしても周りから化粧が薄いとよく言われていた。

 だからカラコンの代わりに僕は涙袋と瞼をキラキラにして、カラコンの不足を補っている。

 そう云うことを続けているとアイシャドゥパレットのグリッターラメの部分だけ無くなって仕舞ったので、最近リキッドタイプの同系色のグリッターラメを買った。普通はカラコンをするとテンションが上がるらしいが、僕は涙袋にグリッターを塗ると気分が上がる。

 多種多様で「橋本環奈の瞳になれるカラコン」や「白石麻衣の瞳になれるカラコン」などの謳い文句で売り出されていたり、色もブラウンやイエローやブルーやグレーやグリーンなど種類豊富なカラー展開がされているカラコンが、各メーカーから出ていて、ネット上のカラコンショップに並んでいる商品は数百種類に及ぶ。どれも一日使いで一箱十枚入り千五百円など高価で、とてもじゃないけれど僕には中々手が出せない。なので僕は今日も千円のrom&nd#03のイブニング・スターを涙袋に塗る。カラコンに負けるか、と思いながら。

 そうして思い出した、いつかノーメイクのときに前の主治医に言われた「そんなキラキラした目で見ないでください」と云う言葉を……。それはきっと診察室の真上から僕を照らしていた蛍光灯の所為だ、僕の瞳が輝いているなんて、そんなことはない。

 昔から学校の先生達から顔色が悪いとよく言われていた僕は、その頃からずっと死んだ魚の目と人を殺しそうな目のオッドアイだったから。そんな僕の瞳を見て可愛いだとか好きだとか、そう云うことを思ってくれる人が、僕の目を好きだと言ってくれる人がいつか現れるなんて、そんな筈……。それでも。

——いつか誰かに言って欲しい、君を見ると僕の世界に星が降ると。


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