ホールスタッフがみんな認知症な「注文をまちがえる料理店」 【PR研究所023】
2017年、ホールスタッフがみんな認知症の「注文をまちがえる料理店」がオープンしました。
この料理店は名前の通り、スタッフが認知症の方々で構成されており、ときどき注文を間違えます。
このキャンペーンの仕掛け人は元NHK ディレクターの小国士朗さんで、認知症の理解促進と「ま、いっか」という寛容なきもちをみんながもてるようにしたいという目的のもと始まりました。
小国さんは「世界的にも認知症は誤解されいてることがある。認知症になったら何もできなくなってしまう(と誤解され)、時に社会から認知症が隔離されてしまうが、そうじゃない。」と話します。
苦手なことはあるかもしれないけど、周囲の「ま、いっか」という寛容な気持ちのもと同じ暮らしを送っていけるというビジョンがみえます。
実際に、WHOによると認知症の患者は世界に3500万人、2050年には1億5000万人にものぼるとの調査結果があります。高齢化の進む日本でも割合が高くなるのは簡単に予想ができます。
(「ま、いっか」の気持ちですね。動画よりスクショ)
2019年には、厚生労働省でもキャンペーンを実施しました。
現在では「注文をまちがえる料理店」は法人化され、活動を広めるための募金もしていますのでぜひ。
認知症への理解を促すことをキャッチーに行った素晴らしいキャンペーンです。「注文をまちがえる料理店」は同年のカンヌで賞を受賞しました。
PRの事例として特に注目すべきは2点あります。
1点目は、認知症の方々と実際にやりとりをすることで、効果的に「1番の目的である認知症への正しい理解」を可能にしている点です。普段認知症の方と関わることがないお客さんでも、「ま、いっか」のきもちを店外でも持つことができれば、お客さんの大きな意識改革になっています。1番の目的を達成するためには何が必要か?という問いからしっかり外すことなくユニークな施策をうったと思います。
2点目は、メディアとの関係構築が上手な点です。ググってみれば分かると思うのですが、メディアによってさまざまな切り口で取り上げられています。「認知症」「キャンペーンのきっかけ」「発想法」などなど、それぞれのメディアが気になる"引き出し"に満ちているという印象です。