マガジンのカバー画像

読書日記

111
運営しているクリエイター

2023年8月の記事一覧

時代に抗う男たちの物語は今の時代にもちょっと通じる『孤剣の涯て』

時代に抗う男たちの物語は今の時代にもちょっと通じる『孤剣の涯て』

表紙もおどろおどろしいし、呪詛や呪いという話が出てきたのでワタクシの大好物の伝奇小説かなと思いましたが、剣豪✕ミステリという本でした。

主人公は宮本武蔵、でも全盛期の宮本武蔵ではなく、弟子に見捨てられ道場の存続も危ぶまれ借金まみれになったという落ちぶれた宮本武蔵です。
そんな武蔵のもとに舞い込んだのが、家康に「五霊鬼の呪い」をかけた首謀者を探せという依頼。
武蔵はこれを断っていますが、最愛の弟子

もっとみる
暑さが増すホラー『禍』。小田雅久仁はやっぱすごかった

暑さが増すホラー『禍』。小田雅久仁はやっぱすごかった

これまた事前評判のよい『禍』
「評判がよい」という事以外の情報を入れずに読んだので、読み始めて気持ち悪…となりました。あんまりホラーだと謳っていないけど、まごうことなきホラー。
乱歩の人間椅子読んだあとしばらく、ふかふかのソファーに座りたくなくなるじゃないですか。あんな感じの読後感が残ります。
しかも、人の身体がモチーフになった話ばかりなので、その気持ち悪さもより身近というかなんというか。

「楽

もっとみる
昨年に続いてミステリベストを席捲しちゃうんじゃないの、これ。『可燃物』

昨年に続いてミステリベストを席捲しちゃうんじゃないの、これ。『可燃物』

米澤さんの本は全部読んでいます!という読者ではないので、何を読んでも「あ、この感じは米澤さんだ」というものを見つけられないままにいます。そしてその気持ちは昨年の『黒牢城』でより強くなったとも言え。。。
昨年のミステリ各賞を総ナメし、直木賞を獲ったあとの新作とくれば読者の側の期待値はどうしても高くなりますよね。がっかりしたらその時はその時だ!と思って帰省のお供に持っていきました。

それほどの厚みの

もっとみる
「人」ってなんなんだろう。『ゴリラ裁判の日』

「人」ってなんなんだろう。『ゴリラ裁判の日』

劇団四季のノートルダムの鐘、芥川賞受賞の『ハンチバック』とどこか似たテーマが続きました。

ローズというカメルーンで生まれたゴリラ。人間、それも大人の人間と同等の知能を持ち、言葉を理解出来るので手話で人間と会話も出来る、という特別なゴリラがこの主人公。
ゴリラ社会の掟の中で傷心し、アメリカ(の動物園)での暮らしを選んだ彼女。夫婦となった雄ゴリラを不慮の事故(檻に落ちた人間の子どもを助けるために銃殺

もっとみる