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「接遇・サービス点検」のご提案

2024年度上半期でも特養・デイサービスで実施しました「接遇・サービス点検」の要望が増えてきているので、どんなコンサルティングメニューなのかご紹介したいと思います。


コロナ禍で生まれた閉鎖的なサービス提供を改めるきっかけ

新型コロナウイルス感染症対策として、福祉・介護施設・事業所はこれまで当たり前のように行っていた家族面会や地域・ボランティアとの交流をストップせざるを得ない状況に直面しました。
それから早4年、徐々に家族面会や地域・ボランティアとの交流を再開させる福祉・介護施設・事業所が増え、コロナ以前の状況に戻りつつあります(記事を書いている直近ではコロナ感染者が増え、現場で働く職員はいまだマスク着用を余儀なくされています)。

そのような状況で福祉・介護施設・事業所は外部の目が一切入らなくなり、今まで当たり前だった言葉遣いや接し方、サービス提供の質が低下したと感じる経営層の声が上がってきました。
そこで、サービス提供時間に評価者が利用者と職員のやりとりや関わり方などの接遇・サービス提供全般を評価したいというご依頼があり、「接遇・サービス点検」というコンサルティングメニューが確立しました。

「接遇・サービス点検」の流れと項目

「接遇・サービス点検」の1日の流れは、10時から特養であれば昼食・食後排泄までの14時ごろ、デイであれば午後レク・おやつになる15時ごろまで評価者がフロアやユニットに滞在し、「良いと感じたやり取り・場面」と「違和感のあったやり取り・場面」をメモや写真に残し、場面観察後の口頭フィードバック時の根拠としてしたためます(場合によっては、スクリーンに投影してお伝えします)。

口頭フィードバック後、「フィードバックレポート」にまとめて、お返しします。

観察の視点は以下のような項目です。
場面ごとの接遇・サービス全般の項目以外にも、感染症対策、リスクマネジメントと多岐にわたります。

⓪共通:認知機能低下のある利用者が理解できる声かけ
    利用者のペースに合わせたケアの提供
    利用者が理解・納得した上でサービスを提供
①食事:提供時間、提供方法・衛生面、食形態、栄養管理
    食事介助、口腔ケア
②入浴:誘導、羞恥心・プライバシー配慮、安全面、整容
③排泄:尊厳への配慮、羞恥心・プライバシー配慮
    カテーテル・ストマ等使用者への対応
④更衣・着脱:衣類の選択、自尊心・プライバシー配慮、ベッドメイキング
⑤移動・移乗:保有機能の活用(自立支援)、主体性の引き出し
       介助方法、安全確保、福祉用具の適切な使用
⑥感染症対策:手洗い・消毒、ディスポ・マクス着用などの感染対策
⑦リスクマネジメント:事故防止、ヒヤリハット
⑧接遇:挨拶、言葉づかい、身だしなみ、利用者の意思と選択の尊重
⑨環境設定:季節感を感じる設え、掲示物の工夫、臭気、家具の清潔さ
      落ち着いた生活空間、 移動導線の確保 など

「接遇・サービス点検」の違和感があった事項例

以下に、「違和感のあったやり取り・場面」の代表例を列挙したいと思います。
記載の視点はあくまでも家族がその場面ややり取りを目にしたら、どう感じるかという視点になっています。
皆様の施設・事業所ではそのようなことが起こっていないでしょうか。
ぜひ、自己点検してみてください。

【⓪共通】
・入室時に「失礼します」といってから入室している職員がいます。
 ただし、無言で入室している職員もおり、統一されていません。
・利用者の応答を待たず、職員が車いすを押し始める場面がありました。
 職員の業務優先のような印象を感じました。

【①食事】
・食事を配膳する際、利用者の頭上を通過しています。
・食事介助をする際、献立の説明はありますが、美味しく食べるための会話は多くありません。
・「頑張って食べましょう」「全部食べれて(飲めて)偉いですよ」といった声かけがありました。食事や水分は頑張って摂取するものではないですし、子ども扱いしているような声かけになっていると感じました。
・口腔ケア用品が他者のものに接触しており、不衛生です。

【②入浴】
・浴室にかかっているのれんの隙間から脱衣場の中が見えています。
・ドライヤーをフロアで行っており、羞恥心に配慮するならば洗面台など人目につきにくい場所で行うことが望まれます。

【③排泄】
・排泄表が表向きに置かれています。羞恥心やプライバシーに配慮するためにも裏にしておくことが望まれます。
・トイレの扉が閉められておらず、中のやりとりが外に漏れています。
・排泄カートの排泄用品が丸見えになっています。あからさまに排泄介助を行っていると察知されないような配慮があると良いと感じました。
・(デイ)皆に聞こえるように「トイレ行く?」と尋ねている職員がいました。丁寧語ではないですし、羞恥心・プライバシーに配慮した声量が望まれます。

【④更衣・着脱】
・フロアで髭剃りをしている職員がいました。羞恥心に配慮するためにも居室内や洗面台で行うことが望ましいです。
・離床後のベッドメイキングが綺麗に整えられていませんでした。
・(デイ)静養ベッドの枕に髪の毛がついており、不衛生だと感じました。

【⑤移動・移乗】
・職員が片手で車いす2台を誘導していました。利用者はものではありません。
・チルト式車いすの背もたれを動かす際、「上げます・下げます」の声掛けがありませんでした。
・車いすを押すスピードが速いと感じる職員がいます。

【⑥感染症対策】
・消毒ボトルを携帯しているにも関わらず、一介助一消毒がされていません。
・鼻マスクの職員やマスクを外している職員がいました。施設のルールでは着用することになっていますが、徹底されていません。リーダー職員がそばにいましたが、注意している場面が見られませんでした。
・ディスポ手袋をずっとつけたままの職員がいます。必要に応じて、着脱しないとかえって不衛生だと感じました。

【⑦リスクマネジメント】
・職員が背を向けて申し送りを行っています。

【⑧接遇】
・利用者の目線に合わせて声をかけている職員がいました。ただし、見下ろすような姿勢で話しかける職員もおり、統一されていないと感じました。
・車いすの利用者の視界に入らない位置から声をかけたため、利用者が驚いていました。
・利用者に対して丁寧語ではない言葉づかいの職員がいました。
・職員同士が丁寧語で話していませんでした。
・職員を遠い位置から呼び止めているため、必要以上に職員の声量が大きくなっています。
・利用者と話している途中で、次の動作に移っている職員がおり、職員の業務優先の対応になっていると感じました。

【⑨環境設定】
・季節感のない掲示がされています。
・掲示物が傾いてかけられています。
・ホコリが溜まっているところがありました。

いかがだったでしょうか。
実は心当たりがある内容もあったのではないでしょうか。
上記のような違和感を感じる場面ややりとりを実際に見聞きしたことがあれば、見過ごさずに早急に対応策を講じていきましょう。

やっておしまいではなく、改善するまで繰り返す

「接遇・サービス点検」は1回やっておしまいではなく、「フィードバックレポート」を踏まえ、PDCAサイクルを通して具体的な改善活動を実践しています。
毎月の経営会議やリーダー会議、虐待防止委員会などの会議体で取り組みの進捗管理を行い、不適切ケアの芽を早期に詰んでいく実践的なコンサルティングメニューとなっています。

しかしながら、「利用者に対して丁寧語ではない職員がいます」という課題に対して、該当する職員に「丁寧語で話すよう指導を行う」といった対策では改善されないことは皆さんご承知のとおりだと思います。
接遇・サービス提供が改められるまで、習慣化するまでには時間を要します。
また、その当事者だけではなく、組織的に「丁寧語で話すことが当たり前の職場」にしていかなければ、組織風土として定着しません。
「リーダー層を中心に実践し、丁寧語ではない職員に指導を行う」「職員同士が丁寧語で話すことで言葉づかいを切り替えないで済むようにする」「職員の業務優先の声かけにならないよう、目線を合わせたコミュニケーションで一呼吸おいた対応を行う」など、職員個人の資質に頼るのではなく、組織のルール・基準に対して行動を促すようにしましょう。

そのほか、PDCAの「Check」「Action」を機能させるポイントはこちらの記事をご参考になさってください。

職員の「接遇・サービス点検」の視点を養い、推進できる組織をつくる

「接遇・サービス点検」のゴールは、その福祉・介護施設・事業所の職員さんが「接遇・サービス点検」の視点を養い、職員さんたち自らが接遇・サービスの質向上に向けて主体的に取り組みを推進できる組織をつくることです。

だって、職員さんの本音を言えば、私のような外部の人間が来て、接遇・サービスについて良い・悪いって言われたくないじゃないですか(笑)
だからこそ、結果をフィードバックし、PDCAサイクルを通して、皆さんたちがその視点を養ってもらいたいと思いながら行っています。
ぜひ、そのような人材育成を兼ねて、「接遇・サービス点検」をご希望の福祉・介護施設・事業所がございましたら、お気軽にお問い合わせください。
よろしくお願いいたします。

管理人




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