『コーチャビリティ』のタイプ別指導・育成と育成担当者の立ち居振る舞い
『コーチャビリティ』とは
『みんなのフィードバック大全』という書籍を読んでいると、聞きなれない『コーチャビリティ』というキーワードがありました。
福祉・介護現場で人材育成や指導に悩んでいらっしゃるリーダー層や中堅層の育成担当者に知ってほしいと思い、今回、記事として取り上げたいと思います。
要するに、"上司・部下関わらず、誰かからアドバイスや指摘を受けた時、反発(反論)することなく、素直に聞き入れることが出来る"ことです。
福祉・介護業界に関わらず、確かに誰かにアドバイスや指摘を受けて「はいっ。はいっ。」と返事してくれ、スッと聞き入れてくれる人と、不満そうな態度を取ったり、言い返したりする人に分けられるように思います。
人材育成や指導する際に前者のようなタイプであれば、育成担当者も育て甲斐があったり、もっと教えてあげたい(伝えられることを伝えてあげたい)と意欲的になると思います。
一方、後者のようなタイプであれば、育成担当者も嫌々関わることになり、関係性もよくありませんから、育成成果も十分に上げられないでしょう。
特に、ギャップフィードバック(相手にとって耳の痛い指摘をする場合)において、『コーチャビリティ』が低い場合(=反発(反論)される)、指摘事項を正しく理解してくれたり、行動変容を促すことは困難だと思います。
『コーチャビリティ』のタイプを知る
では、皆さんの『コーチャビリティ』は高いでしょうか、低いでしょうか?
下記は書籍の中にある『コーチャビリティ』の自己評価として、「成長意欲」「他者から改善点の指摘を受けた時」のあなたの反応として一番近い項目をそれぞれ選んでみてください。
「成長意欲」と「他者から改善点の指摘を受けた時」の反応の数値を下記の4象限に落とし込んでみてください。
A~Dタイプのどのタイプになったでしょうか?
成長意欲が高く、ギャップフィードバックに対する抵抗感が薄い「A:高成長タイプ」のあなたは、高い目標を持ち、他者のフィードバックを栄養にして、どんどん成長していける人材です。
一方、成長意欲は高いけど、ギャップフィードバックに対する抵抗感が高い「B:伸びるのに損をするタイプ」のあなたは、成長意欲は高いものの、他者からのフィードバックを忌避(嫌って避ける)するため、成長機会を無駄にしている人材です。
『コーチャビリティ』のタイプ別の指導・育成
ご自身の『コーチャビリティ』の自己評価が出来たら、今度は自身の部下が4象限のどのタイプになるか落とし込んでみましょう。
『コーチャビリティ』のタイプによって、育成担当者がどのように部下に指導・育成したり、立ち居振る舞いしなければならないかが変わってきます。
書籍では、抵抗感を下げることは生まれ持った資質として改善することが難しいため、成長意欲をいかに高められるかという視点で『コーチャビリティ』の高め方がまとめてありますので、興味のある方は書籍を手に取ってみてください(以下の事例は、どのような指導・育成アプローチが必要か、私の経験値として記載します)。
例えば、「B:伸びるのに損をするタイプ(成長意欲が高く、抵抗感が強い)」の部下の場合、上司・部下の関係性を構築するとともに、より幅広い視野や考え方を他者からのアドバイスや指摘を通して吸収してもらえるような働きかけ(1on1の面談を通した関係性の構築、コーチングによるアウトカム(取り組み成果)を評価、育成担当者の研鑽など)が育成担当者には求められます。
また、「C:目線の低さがもったいないタイプ(成長意欲が低い、抵抗感が薄い)」の部下の場合、他者からのフィードバックは受容できるものの、成長意欲が低いので、フィードバックに対する反応も弱く、育成成果が期待値を下回る可能性が高いです。
このような人材を指導・育成する場合は成長意欲を高められるような働きかけ(目標設定・管理、リーダーや委員会の委員長へ抜擢、資格取得の推奨など)が育成担当者には求められます。
「D:現状停滞タイプ(成長意欲が低く、抵抗感が強い)」の部下の場合、上司からのアドバイスや指摘を通して、スモールステップを積み重ねながら自信をつけてもらい、成功体験を感じられるような働きかけ(BとCを掛け合わせた取り組み)が育成担当者には求められます。
『コーチャビリティ』の4象限以外にも、フォロワーシップの5つのタイプ(模範的・順応型・孤立型・実務型・消極的フォロワー)など、部下が組織の中でどのような人材で、どのような指導・育成アプローチがマッチングするか、型にはめても100%上手くいくとは限りませんが、「なぜ指導・育成が上手くいった・上手くいかなかった」の根拠として相手のタイプを知っておいても損はないでしょう。
私自身も、周囲からアドバイスや指摘を受けることが多々あります。
『コーチャビリティ』が高い状態を維持できるよう、いつまでも素直で、謙虚に相手の言葉に耳を傾けながら、新たな気付きや知識の源泉にしていきたいと思います。
管理人