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ため息俳句 秋霖

秋霖しゅうりん」とは、秋の長雨をいうのだが、陰気な雨になる。

秋霖や湘南新宿ライン憂鬱行  空茶


 リタイヤして一番ありがたかったのは、この朝晩の通勤列車からの解き放たれたことであった。
 通勤時間の長さでは職場でも指折りで、都内に住むものからみれば、ほとんど毎日小旅行をしているかのように、目に映っていた。
 特に、電車の空調の機能が貧しかったころは、窓を明けることも出来ない梅雨時と春・秋の長雨時の湿度100セントの車内は、堪らなかった。それでなくとも、始発駅乗車で座れるとはいえお話にならないほどの満員列車では、座っているのであっても、身を縮めるごとくしなければならなかったのである。それも、朝の上りの話で、帰宅時は立ちん坊である。
 通勤地獄という言葉があったが、この頃はあまり聞こえないが、たいして変わりはあるまい。本当に毎日の通勤通学ご苦労様である。

庭先で

 そんなことを思いだされてくる秋の雨が、先ほどまで降っていた。今日も一日家に籠もって、なんとはなしの時間が過ぎて、今ようやく西の空が薄曇りながら明るくなってきたのだ。

 種まきが、ほうれん草や小松菜、青梗菜などだが、済ましていない。数日間ほど晴れてくれないかと。

 こんな時にこそ、晴耕雨読の言葉通りに、俳諧書の一つも読めばいいと己も思うのだが、そんな気にもなれないのは、うまれながらの怠け者であるからか。

秋霖や子らと遊びし将棋駒  空茶


つれづれの将棋崩しに秋の雨


蘇芳の種

午睡ねむる間に妻帰るらし秋の雨